派手・奇抜さに弱い「直接民主主義」 日本でも起きている左と右を分断した最大要因

どうなる?日米関係 米大統領選

 今回の米大統領選では、頻繁に「国家の分断」が指摘された。これを左翼的人物は「新自由主義がグローバリズムとも結びついて世界的に進むなか、それとの間で生じた矛盾との葛藤が起きている」と言いたがる。しかし、それはおかしい。

 そもそも、グローバル企業は大体、リベラル思想を奉じており、米国では「反トランプ」で民主党支持だ。背景として、まず、「予備選挙などの直接民主主義が、左右の分断を促進した最大の要因だ」ということを説明したい。これは、日本でも起きている問題なので、とても大事なことだ。

 問題の所在を簡単に言うと、第1に、予備選挙をすると左と右の極端な候補が選ばれやすく中道派は排除される。第2に、政策などでなく大衆に受けるかどうかが優先される。そして、第3に、個々の政策の印象が優先されて政策的整合性が軽視されることだ。

 かつては予備選挙の比重が低く、ワシントンの議会指導者たちの意見が重んじられたし、しかも党大会の前に決着が付くことは少なかった。結局、大会の期間中に葉巻の煙が立ちこめる部屋の中で談合が行われ、そこで選ばれるのは、反対党の候補者の票を食える中道派の候補だった。

 しかし、予備選挙は、民主党と共和党の支持者として登録された人々だけの間で行われるので、無党派の中間層の意見は採り入れられない。特定の圧力団体の意見で票は大きく動く。しかも、各州の予備選では、単純多数で候補者が決まるので、4年前の共和党ではドナルド・トランプ大統領の支持率は高くなかったが、穏健派の候補乱立に助けられた。

 次に、日本でも政治家の知的レベルの低下は著しいが、これは世界的な傾向だ。かつてのようにリベラル・アーツ(一般教養)など求められず、見かけの良さ、演説のうまさ、親しみやすさとかが勝負の鍵となっている。

 そして、トランプ氏や、社会主義者を自称する民主党のバーニー・サンダース上院議員のような、派手で奇抜な政策に大衆は弱い。さらに、大衆は政策的整合性とか、幅広い人々への配慮とか考えない。だから、財政的制約など無視されるし、共和党は白人の、民主党はヒスパニック、黒人、都市のインテリ・リベラルなどの要求に極端に引っ張られるのである。

 また、カリフォルニア州などでは特に、住民投票が個別問題ごとに行われるので、奇抜な政策がどんどん採用されて、大麻まで自由化された。

 ■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『ありがとう、「反日国家」韓国』(ワニブックス)、『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(同)、『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社新書)など多数。

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