米大統領選・現場をゆく(下)治安維持と人種差別 揺れる「法と秩序」  

 米中西部ミネソタ州で5月に黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官に首を圧迫され死亡した事件を受けて全米の大都市に拡大した「黒人差別解消」を求める抗議デモは、黒人運動「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命は大切=BLM)や、極左系過激勢力が扇動する都市占拠や凶悪な暴動に変質した。大統領選でも「人種差別」と「治安維持」は重大な争点に浮上している。

市民が守る巨大都市

 東部ニューヨーク市の住宅街アッパーウエスト。9月末の夜、そろいの赤いベレー帽とTシャツを着た市民ら7人が約2時間にわたって市中を歩き回り、犯罪やもめごとが起きていないか目を光らせた。

 昼間は教師やカフェ店員、プログラマーなどの仕事を持つ彼らは、自警団「ガーディアン・エンジェルス」のメンバーだ。代表のカーティス・スリワ氏(66)によると、今年の夏以降、新たに70人の住民が活動に参加した。

 「犯罪が増えたのが原因だ。街を自分たちで守ろうと立ち上がる住民が増えている」

 全米で最大となる約840万人の人口を抱えるニューヨーク市では、差別解消の抗議デモに乗じた暴動や凶悪犯罪が急増した。今年の銃撃事件は前年同時期比で約2倍の1100件以上に達している。

 要因の一つは、ニューヨーク市議会が6月末、「警察予算の打ち切り」を叫ぶBLMや過激勢力の要求に応じ、ニューヨーク市警(NYPD)の予算を10億ドル(約1050億円)削減すると決定したことだ。

 これにより、私服で凶悪犯罪が頻発する地域の捜査にあたるエリート部門「防犯部隊」が解散を強いられた。また、決定に失望した警官の自主退職が急増。その数は申請中を含めると2200人を超えている。

 スリワ氏は、事態の責任は治安対策を軽視する民主党のデブラシオ市長にあると断じ、こう嘆いた。

 「警察は『人種差別』批判を恐れて萎縮している。ほくそ笑んでいるのは街のギャングたちだ」

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