「税逃れのトランプ」は学生時代から有名な嫌われ者だった

 筆者が、トランプ氏は納税していないと早くから確信していた理由は巷の噂だけではない。筆者の友人で不動産投資の天才であるT氏のおかげであった。同氏は不動産プロジェクトを自ら手掛けて成功している。ハーバード・ロースクールを首席で卒業した男で、その頭脳の明晰さにはいつも驚かされた。金融機関や個人投資家から融資を引き出す交渉力にも長け、多くの銀行や富豪がT氏に協力してきた。

 T氏の成功を助けたのはインフレである。アメリカ経済が成長してインフレが続いた時代、彼の持つ不動産の市場価値はどんどん上がった。T氏はその頭脳を駆使して、値上がりした不動産を担保にどんどん資金を増やしていった。借りた金は収入ではないから税金がかからない。担保もあるから自由に使える。T氏は絵画を買ったり、競走馬を買ったりして、夏は避暑地の豪邸で過ごしていた。

 しかし、不況がやってくるとT氏は苦境に立たされた。投資家から集めた資本金は返さなくてもいいが、金融機関からの融資は返済を迫られた。一時はT氏もこれまでかと思った時期もあったが、ある中東の王族が資金バックアップを申し出て、そのピンチを救った。才能と実績があったために、命拾いしたのである。

 不動産ビジネスというものは景気に左右されて天国も地獄も見る。トランプ氏のストーリーも大体T氏と似たりよったりのはずだった。もちろんトランプ氏の場合、T氏よりさらに規模が大きく、業界のボス的存在だったため、取引相手はもっと大物揃いで、資金面ではロシアのプーチン大統領や日本のトップビジネスと話ができる存在だった。しかし、それだけに損失も大きかったはずだ。大統領になる前の10数年間は、トランプ氏の手法で不動産ビジネスが成功したはずがないと思われたのである。

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