パレスチナ問題、風化が加速 「裏切った」UAE・バーレーン非難

 【カイロ=佐藤貴生】米国の仲介により、ホワイトハウスで15日、イスラエルと国交正常化の署名式典に臨んだペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンの外相は、ともにパレスチナ問題解決に努力するようイスラエルのネタニヤフ首相に求めた。

 だが、式典の場にパレスチナ高官の姿はなく、現地では抗議のデモが起きていた。パレスチナ問題を置き去りにするUAEとバーレーンの姿勢は明らか。問題風化の加速は避けられない。

 署名式典で、UAEの外相は国交正常化により「独立国家という(パレスチナ側の)希望を実現させることができるだろう」と述べた。バーレーンの外相も、イスラエルと将来のパレスチナ独立国家創設による「2国家共存」案が「平和の土台になる」と訴えた。

 しかし、イスラエルとの国交正常化という「アラブの禁じ手」を使い、独立国家創設に見切りをつけたのは両国に他ならない。パレスチナでは「裏切りだ」との非難があふれ、式典のさなかにはパレスチナ自治区ガザからイスラエル領にロケット弾が撃ち込まれた。

 8月に発表されたUAEとイスラエル、米国の国交正常化合意に関する声明には、イスラエルが意欲をみせていた占領地ヨルダン川西岸の併合停止に関する一文が盛り込まれたが、ネタニヤフ氏は「計画に変更はない」と主張する。併合を強行した場合も、UAEやバーレーンがイスラエルと断交するとは考えにくい。

 苦境を招いたのはパレスチナ自身でもある。アッバス議長率いる自治政府がヨルダン川西岸を、一方でイスラム原理主義組織ハマスが自治区ガザをそれぞれ統治する分裂状態が10年以上に及び、国際社会への訴求力は弱まるばかりだ。

 アッバス氏は任期が切れた2009年の後も自治政府の議長選を行わず、腐敗の蔓延(まんえん)も伝えられる。独立国家創設の熱意など、とても感じられない。

 パレスチナ暫定自治に道を開き、中東和平への期待が高まった「オスロ合意」から27年。イランの脅威増大を訴えてアラブ諸国の結集を図るというトランプ米政権の異次元のアプローチで、パレスチナ問題はかつてないほど色あせた。

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