香港立法会の「全人代」化狙う 「愛国者治港」へ強権発動

 【香港=藤本欣也】香港政府は、民主派勢力12人の立法会(議会)選への立候補を禁止した上で31日、選挙の延期を正式発表した。立候補禁止と延期は、矛盾した措置のようにみえる。しかしいずれも、立法会を“翼賛議会”とするための布石で、中国の習近平政権が目指す「愛国者治港」(愛国者による香港統治)に向けた強権発動だ。

 「選挙を安全に行うには懸念がある。市民を守るために…」

 同日の記者会見で立法会選の延期を発表した林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は、「市民のために」を強調した。しかし民主派は、香港政府が「中国」のために選挙の延期はもちろん、民主派の立候補禁止を決めたとみている。

 今回、当局が立候補資格を認めなかった規模は前回2016年の立法会選の6人から倍増した。その理由もさまざまだ。香港国家安全維持法(国安法)への反対だけでなく、「外国に中国・香港問題への関与を求めた」「立法会で議員の権力を行使し政府に要求受け入れを迫ろうとしている」なども禁止理由とされた。

 民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏ら抗争派と呼ばれる民主派内の急進グループはもちろん、穏健派でも中国・香港政府に非協力的な言動をした候補者は排除した形だ。その上で、林鄭氏が31日、立法会選の延期を発表した。

 排除と延期を決定したのは「中国当局」の見方で親中派も民主派も一致する。

 親中派勢力の重鎮で、全国香港マカオ研究会副会長の劉兆佳(りゅう・ちょうか)氏は香港メディアに対し、「米国の脅威に直面する中国当局は『半忠誠』ではなく、絶対に忠誠を誓う反対派(民主派)しか立候補を認めない」と指摘した。

 来年、改めて立候補の受け付けが行われる見通しだ。ただ今回、選挙管理当局が立候補資格の“基準”を明示したことで、延期後の立法会選に出馬するには、反中国・反香港の言動はおろか、中国・香港に非協力的な言動さえも自制しなければならなくなる。

 また、民主派の間では「来年9月の選挙までに急進派を根こそぎ逮捕するつもりでは」(民主派関係者)との懸念が広がっている。「愛国者治港」を整備する準備期間として、延期を利用するとの見立てだ。

 民主活動家の周庭氏(23)は民主派の大量排除を受けて、「立法会が中国の全国人民代表大会(全人代=国会)に変わるのは簡単なことだ」とコメントした。全人代は議案を承認するだけの“ゴム印”と揶揄(やゆ)されているが、中国の狙いも立法会の全人代化にあるとみている。

 民主派陣営からは抵抗手段として、「来年の立法会選では有権者に白票の投票を呼び掛けるしかない」との声も上がり始めた。

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