日韓分断の裏…元慰安婦支援団体と北朝鮮の関係

【河村直哉の時事論】

 韓国が揺れている。元慰安婦支援団体とその前理事長の、金銭をめぐるさまざまな疑惑についてである。それらの疑惑だけでなく、支援団体や前理事長と北朝鮮の関係を思わせる記事を韓国紙がぽつぽつと出している。興味深い。

金銭めぐる疑惑

 発端は元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏の5月7日の発言。ソウルの日本大使館前で毎週、日本政府への抗議集会を開いている「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)について「集会は憎悪を教えている」「参加学生からの募金はどこに使われるか分からない」などと強く批判した。

 正義連前理事長で、4月の総選挙で与党系から当選した尹美香(ユン・ミヒャン)氏についても「国会議員になってはならない」と非難した。尹氏は正義連の前身である「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)時代から慰安婦運動を率いてきた。この問題での韓国の「反日」を象徴する存在といってよい。

 李氏の発言があってから、挺対協時代からの不自然な家屋の売買や不明朗な会計記録など疑惑が次々と持ち上がり、検察も捜査に入った。尹氏は会見し疑惑を否定したが、今後、事実が明らかになっていくだろう。

北朝鮮とのつながり

 それら金銭をめぐる疑惑とともに、尹氏らと北朝鮮の関係を思わせる報道がなされている。朝鮮日報日本語版は、中国の北朝鮮レストランから女性従業員とともに脱北した元支配人の証言を載せた。尹氏夫妻は脱北者が北朝鮮に戻るよう懐柔し、尹氏の夫は「将軍様」などの言葉を使いながら北朝鮮の革命歌謡を歌ったという。

 また朝鮮日報は、欧州旅行プログラムに参加した学生を、挺対協が「北朝鮮のスパイと会わせるなど、親北朝鮮・反米教育をしていた」とする参加者の証言が明らかになったとも伝えた。

 挺対協と北朝鮮の関係は、日本でも以前から知られていたことである。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記死去の際は幹部が弔電を送ったというし、尹氏自身が2014年、日本人記者団の取材に対し「人道主義的な『親北』だと思ってもらえばいい」と話している(平成26年5月24日付産経新聞)。

 朝鮮日報は1日、韓国内での尹氏への疑惑の提起を北朝鮮が「親日・積弊勢力の卑劣な陰謀策動の産物」と批判し、尹氏をかばい始めたとも報じた。

 挺対協ないし尹氏と北朝鮮の関係は今後さらに明らかになるだろう。以下は現段階での見立てである。以前も書いたことだが北朝鮮は共産主義国だということを忘れるべきではない。そして共産主義は、資本主義・自由主義陣営を分断し離反させることを闘争原理として持っている。ロシア革命を指導したレーニンの思想においてそれは顕著である。

 尹氏や挺対協、正義連の長年の活動で何が進んだか。慰安婦問題で日本に対する韓国人の「憎悪」が拡大した。日本と韓国という自由主義陣営の分断が進んでしまった。そこに北朝鮮の意向が働いているとまでは現段階ではいえない。しかし「親北」を公言する尹氏の活動が、北朝鮮の望む方向と重なってくることは十分考えられる。

分断の回復を

 尹氏や挺対協、正義連の実態が韓国で知られていくことで、慰安婦問題に対する韓国内の一般の見方も変わってくるかもしれない。しかしそうであっても時間がかかると思われる。韓国内で良識的な保守派が声を上げてほしいというのは、筆者の変わらぬ思いである。

 政治的にいえば保守は反共のはずである。思想的にも、保守はその国の歴史や価値観を重視するのに対し、共産主義は国家を階級対立の産物と捉え、国家を「廃絶」させようとする(レーニン)。相いれない立場であるといってよい。韓国にも、北朝鮮という共産主義国と向き合ってきた保守の歴史があるはずである。

 以前取り上げた韓国の「反日種族主義」も、自国を愛するがゆえの書物であるという点で保守の系列にあるといえる。韓国を覆うさまざまな「嘘」を批判した。プロローグで「嘘の行進は日本軍慰安婦問題に至り絶頂に達しました」とし、慰安婦問題を扱ったパートでは挺対協についてこう書いている。

 「真面目に慰安婦問題を解決するのではなく、この問題を利用して韓日関係を破綻させるのが彼ら(挺対協など)の本当の目的でしょう。韓米日の三角協力体制を崩すことができるからです」

 「五〇年過ぎて新たな記憶を作り出し、日本を攻撃し続けて、結局韓日関係を破綻寸前にまで持って行ったこと、まさにこれが一九九〇年以降の挺対協の慰安婦運動史でした」

 自由主義陣営の分断という事態を的確に指摘している。尹氏のさまざまな疑惑の解明が進められるとともに、このような認識が韓国で広く共有されることを願う。日韓の分断は回復されなければならない。(編集委員兼論説委員)

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