米、コロナで中国の責任追及へ! 地図上から消えた?武漢市の「重要施設」とは… 「疑惑の研究所」に迫る!

 ドナルド・トランプ米政権が、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)をめぐり、習近平国家主席率いる中国の関係追及に乗り出したようだ。複数の米国メディアが先週、湖北省武漢市にある「研究所」について一斉に報じたのだ。世界全体で死者16万人超、感染者230万人以上(米ジョンズ・ホプキンズ大学19日集計)という甚大な被害をもたらした責任はどこにあるのか? 「地図上から消えた」とみられる重要施設とは。ノンフィクション作家の河添恵子氏が、緊急連載第11弾で「疑惑の研究所」に迫った。

 「彼らの『新しいラボ(研究所)』は、高度封じ込めの実験室を安全に操作するために必要な訓練を受けた技術者と研究者が、深刻なほど不足している」「ラボには大規模な管理上の弱点があり、深刻な健康上のリスクをもたらす危険性があり、ワシントンが関与するよう…」

 これはワシントン・ポスト紙が先週火曜日(14日)に報じた、駐中米国大使館員2人(環境、科学、健康部門)による公電の一部である。武漢市の「新しいラボ」の研究者らと面談して、2018年1月19日に「敏感だが機密扱いではない」レベルでワシントンに送ったという。

 この「新しいラボ」の詳細を記す前に、武漢市には2カ所の「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」があることを説明したい。

 1つは、中国当局が当初、「新型コロナウイルスの発生源」としていた海鮮卸売市場(=すでに解体)から、長江を隔てて約12キロ離れた地点、武漢市武昌区にある。

 もう1つが、前出の米国大使館員が指摘した「新しいラボ」だ。海鮮卸売市場から南へ、直線距離で30キロ以上も離れている。中国の官製メディアは数年前までは、「武漢国立バイオセーフティー研究所(武漢国家生物安全実験室)」と記していた。地名は「武漢市江夏区中国科学院武漢病毒研究所鄭店園区(ヂェンディエン・サイエンスパーク)」。

 近年は、「中国科学院武漢病毒研究所」と称し、ヘッドクオーター(本部)も「武昌区」から「江夏区」に移っていたようだ。

 SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した翌04年、中国の胡錦濤国家主席(当時)がフランスを訪問し、ジャック・シラク大統領(同)と「中仏予防・伝染病の制御に関する協力」の枠組みを締結した。これ以降、「中仏P4実験室」と生物安全実験室が設置され、スタッフの研修が始まった。

 習主席が14年3月、フランス・リヨンのメリュー生物科学研究センターを見学し、「『新しいラボ』の建設は、中国の公衆衛生にとって大変に重要であり、中国とフランス両国の協力の素晴らしい象徴」などと指摘した。

 親組織に当たる中国科学院は、「100人計画」プログラムに応募した15人と、全米優秀青少年基金の受賞者5人などの若手を含む、理系のスーパー頭脳を選び、「新しいラボ」に送り込んだ。

 16年12月の公式ウェブサイトには、189の科学研究職を含む合計266人のスタッフのうち、81%が博士号と修士号を取得していること。その多くが、主に米国、フランス、デンマーク、日本、オーストラリア、シンガポール、オランダ、英国など海外とのつながりを持っていることも記されていた。

 湖北省の有力紙「湖北日報」は17年2月23日、フランスのベルナール・カズヌーヴ首相(当時)が訪中し、「新しいラボ」の落成式でテープカットを行い、内部を視察したことを報じている。フランス国立保健医学研究機構、認定委員会、外務省など、中仏のプロジェクト関係者ら100人以上が参加した。

 フランスとのパイプが太い袁志明所長(同)は、記者団に対し、「ウイルスの予防と制御は国境を越え、中国は世界の公衆衛生の安全を確保する責任を積極的に担っている」と語り、「(最も危険な病原体を研究するために指定された)P4実験室の安全性を維持するためには、開放的な文化が不可欠」と研究者らにハッパをかけたという。

 もちろん、新型コロナウイルスの世界的大流行と、最新設備が整った武漢市の「新しいラボ」など、複数の研究所との関係については、世界で誰一人「断定」はしていない。

 しかし、ワシントン・ポスト紙をはじめ、FOXニュース、CNNテレビ、AP通信などの米国メディアは14~15日、新型コロナウイルスについて「武漢の研究所から流出した可能性が高い」「中国政府は偽情報工作まで展開した」という疑惑を一斉に報じた。

 トランプ大統領は15日の記者会見で、「徹底的に調査している」と述べたが、中国当局は疑惑を完全否定している。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は16日の記者会見で、「世界保健機関(WHO)は、ウイルスが実験室で作り出された証拠はないとしており、専門家も実験室から漏れたとの説には科学的根拠がないとの認識を示している」と反論している。

 ただ、不可解なのは、グーグル検索で今年1月の時点で存在したはずの「新しいラボ」が、いつのまにか「地図上」から消えているのだ。「新しいラボ」があったはずの武漢市江夏区の「鄭店園区」という地名も出てこない。これはどういうことなのか?

 いずれにせよ、米国が2年以上前から「危険な内情」を把握していたのだとすれば、トランプ氏が中国政府に「真実を突き付ける日」も遠くなさそうだ。

■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書・共著に『米中新冷戦の正体-脱中国で日本再生』(ワニブックス)、『世界はこれほど日本が好き』(祥伝社黄金文庫)、『覇権・監視国家-世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる』(ワック)など。

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