新型肺炎の死者との「最期の別れ」許されず 告別式禁止で直接火葬 

 【北京=西見由章】新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な中国で、死亡した患者の葬儀・告別式が禁止された。感染予防が理由だが、遺族は斎場での“最期の別れ”も許されず、その悲しみに追い打ちをかける事態となっている。

 「お母さん、お母さん」。母親の遺体を載せて湖北省武漢の新華病院を出るマイクロバスを、若い女性が慟哭(どうこく)しながら追いかけていた。動画を配信した中国メディアによると、母親は新型肺炎に感染しており、告別式を行うことができないまま火葬される。同メディアは「やむを得ないが遺族にとっては残酷だ」と解説した。

 別の武漢市の女性は父親を亡くした直後に「肺炎による死者は病院の霊安室にも入れず、斎場で直接火葬される。次に会うのは遺骨になってからだ」とSNSに書き込んだ。

 中国国家衛生健康委員会などは今月1日に出した通知で、新型肺炎の患者の遺体は疑い例も含めて現地で火葬に付すことを要求。火葬場に隣接する斎場で通常行われる告別式なども禁止した。新型コロナウイルスは飛沫(ひまつ)感染のほか、身体や物を経由した接触感染が主な感染ルートとされているためだ。

 武漢市の新型肺炎の死者は12日午前0時時点で820人に上り、24時間で72人が死亡した。患者の遺体を受け入れる火葬場や火葬炉が指定されていることもあり、斎場による遺体の運送・火葬は各施設が対応できる限界を超えている。

 中国紙・新京報によると、1月下旬に自宅で死亡した高齢患者の遺族は、斎場の車両不足を理由に遺体の引き取りを断られ、葬儀サービス会社に1万2千元(約19万円)を支払って遺体を運んだ。感染のリスクを理由に高額な料金を請求されたという。

 一方、中国誌・財経(電子版)は、新型肺炎の疑いが強いものの病床不足を理由に入院を断られ、感染者数にも疑い例にも計上されない患者が多くいるとの医師の証言を掲載。こうした患者が死去した場合は公式の感染者数や死者数に計上されないままで、「感染の全貌を示すことができていない」と論じた。

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