カンボジア野党指導者初公判 首相就任35年フン・セン氏、弾圧強化に懸念の声

 【プノンペン=森浩】カンボジアで、政府転覆を図ったとして国家反逆罪に問われた旧最大野党「救国党」創設者、ケム・ソカ氏の初公判が15日、首都プノンペンの裁判所で開かれた。首相在任35年を迎えたフン・セン氏は中国の後ろ盾を背景に独裁色を強め、旧野党陣営の弾圧を強化。自身は「あと10年、首相にとどまる」と宣言しており、旧野党陣営は弾圧継続への懸念を強めている。

 ケム・ソカ氏は救国党党首だった2017年9月、外国政府と協力して政権の転覆を画策したとして逮捕され、自宅軟禁下に置かれていた。ケム・ソカ氏逮捕で救国党は解散を余儀なくされ、18年7月の下院選では与党・人民党が全125議席を独占した。

 この日の公判では証拠の開示などが行われ、判決までには約3カ月かかる見通し。ケム・ソカ氏は15日、自身のフェイスブックで「私の活動は人権と民主主義に基づき、平和的に行われていた」とし、起訴内容を否認する意向を示した。

 欧米などの国際社会は政権による野党弾圧に批判を強めており、欧州連合(EU)は武器以外の品目を無関税でEUに輸出できる協定の見直しを検討している。EUは2月にも見直しについて判断を示す見通しで、公判の行方を注視している。

 フン・セン氏は、1985年1月に当時のプノンペン政権閣僚評議会議長(首相)に就任して以降、強権的な手法を維持する。ケム・ソカ氏の訴追もその一環だ。2017年には野党寄りの英字紙に巨額の税金を課して発行停止に追い込んでもいる。

 特に締め付けが強化されたのは昨年夏ごろだ。フランスで事実上の亡命生活を送っていた政敵、サム・レンシー氏が帰国を表明したため、反対勢力結集を懸念し、旧野党陣営の70人以上を拘束した。

 元救国党幹部のミーチ・ソバンナラ氏も違法な抗議活動を行ったとして昨年8月に逮捕され、12月に釈放された。ソバンナラ氏は「カンボジアは民主国家なのか。警察官も裁判官も検察官も与党の息がかかった人物。三権分立も機能していない」と批判する。フェイスブックで政権を批判した文章をシェア(共有)しただけで逮捕された例もあったという。

 弾圧に対して欧米諸国が反発を強め、経済制裁が検討されても、フン・セン氏が強気の姿勢を崩さない背景には中国の支援がある。昨年1~8月にカンボジア政府が認可した投資総額60億ドル(約6600億円)のうち、中国は35・31%と2位の日本(7・87%)を大きく引き離す。人権問題に口を挟まず投資を続ける中国はフン・セン氏にとって好都合なパートナーだ。

 フン・セン氏は14日に首相就任35年を迎え、プノンペンで開かれたパーティーでの演説で首相職を退く意向はないことを宣言。「カンボジアは民主国家であり、父から子への権力移譲はない」として、息子が後を継ぐという噂を否定したが、「フン・センの後継者はフン・センだ」と述べ、首相の座は簡単に明け渡さないことも強調した。

 ソバンナラ氏は「フン・セン氏の権力基盤は強固で、首相から退く意向はない。今後も自由は奪われ続けるだろう」と懸念。日本など諸外国がさらに圧力を強化するよう求めている。

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