イランと暴力団さながらの駆け引き 米「不名誉な撤退」が現実味

 【中東見聞録】イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が1月初め、米軍に殺害された事件は、イランが形ばかりの報復攻撃を行ったところで双方がひとまず矛を収めた。トランプ米政権は「イランに甘い顔はしない」ことを内外に見せつけはしたものの、イラクでの存在感が低下している現実も露呈。トランプ氏が掲げるイラク撤収の公約は、現状では、米国の中東における指導力を損なうものとなる可能性が強い。(前中東支局長 大内清)

高リスク案を採用

 米紙ニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、司令官の殺害は、国防総省が示した複数の作戦案のうち、もっとも選ばれる可能性が少ないとみられていたものだった。国防総省は通常、現実的な案が採用されやすいよう、あえてリスクの高い選択肢もあわせて提示する。

 トランプ氏はその思惑通り、当初は司令官殺害ではなく、イランの支援を受けるイスラム教シーア派民兵への空爆作戦を承認。しかしその後、一転して命令を変更し、国防総省の高官らを「愕然(がくぜん)」(同紙)とさせたという。

 なぜ、民兵への空爆よりも司令官殺害の方がリスクが高いのか。それは、イラン人への直接攻撃であることに加え、ソレイマニ司令官がイランでは「英雄」とみなされているからだ。

 イランは1979年の革命後、イスラム教シーア派指導者による統治という革命体制を輸出するため、中東各地でシーア派勢力を支援した。その先兵となったのが、最高指導者の親衛隊的性格を持つ革命防衛隊だ。

 イランが目指した「革命の拡散」は実現しなかったが、その過程でイランは、武装組織への支援を通じて各国に影響力を保持することが、自国の安全保障に有用であると確信した。たとえば米国やイスラエルと戦争になった場合でも、自国の息がかかった勢力をゲリラ的に各地で動かし、敵を疲弊させることができるからだ。

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