ファーウェイの難局 米中対立のはざまで2020年も続く

 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の徐直軍副会長は31日、2019年の売上高が8500億元(約13兆2千億円)に達するとの見通しを明らかにした。中国のニュースサイト「中国新聞網」などが報じた。18年比約18%増で、前年より伸びは鈍化。トランプ米政権による華為に対する事実上の禁輸措置の影響などにより、年初予想には及ばなかった。通信機器分野で世界的なシェアを持ち、中国国内では圧倒的な知名度を誇るファーウェイとは、どういう企業で、2020年はどうなるのだろうか。(中国総局 三塚聖平)

 ファーウェイの創業は1987年。中国人民解放軍の工兵部門に所属した任正非氏(75)が、広東省深センで通信機器の販売代理店として事業をスタートさせた。78年からト小平指導部が進めた改革開放政策で沸く中国で、ファーウェイは自前での機器開発を手掛けるなどビジネスを拡大させていった。通信機器を中心に海外展開も積極的に行い、2005年には中国国外市場での受注高が初めて国内の売上高を上回っている。

 現在は170カ国・地域で事業を展開し、従業員数は19万人を超える。18年度のグループ売上高は前年度比19・5%増の7212億元(約11兆2700億円)を記録した。05年には日本法人も設立し、日本企業からの部品・部材の調達額は18年には約7200億円に上ると説明している。

 優れた技術開発力と営業力で高機能・低価格のスマートフォンを世に送り出し、急成長を続けてきた華為にとって、この約1年間は未曾有の難局が続いた。米中貿易協議と並行する形でハイテク覇権をめぐる米中対立が深刻化したためだ。

 18年12月1日にはファーウェイの孟晩舟副会長(米国で起訴)が、米当局の要請に基づきカナダ・バンクーバーで身柄拘束された。孟氏は任氏の娘だ。米司法省は、対イラン制裁を逃れるため米国の銀行に虚偽の説明をしたとして孟氏を起訴している。

 米政府は19年5月、同社製の機器を使うと情報が中国側に盗まれる可能性があり、「安全保障上の脅威」との理由でファーウェイへの事実上の輸出禁止措置を発動。8月には国防権限法に基づいて連邦政府機関がファーウェイなど中国企業5社から機器を調達することを禁じた。11月には米連邦通信委員会(FCC)が、ファーウェイと中興通訊(ZTE)の2社の製品に関し、米国内の通信会社が政府補助金を使って調達することを禁じることを決定。トランプ米政権は、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システム時代を見据えてファーウェイの締め出しを進めている。

 ファーウェイは、一連の米側の措置に対して徹底抗戦の構えを崩さない。12月上旬にはFCCによるファーウェイ製品の排除措置は違法だとして米国の裁判所に提訴している。

 また、米国による事実上の禁輸措置への対抗策も進める。8月には独自の基本ソフト(OS)である「鴻蒙(ホンモン)OS(英語名・ハーモニーOS」を発表。鴻蒙は「天地開闢以前の混沌状態」を意味する中国語だ。今後の厳しい状況を見据え、自前のシステムや機器の開発を急いでいる。その一方で、5Gの次の規格となる「6G」の技術開発に着手するなど、これまでと同様に積極的な事業展開を展開する。社内文書によると、19年には最大年俸約200万元(約3100万円)で博士号を持つ新卒者を採用した。任氏は、社内会議で米中のハイテク覇権争いを念頭に「今後3~5年で会社の銃と大砲を全て取り換え、この“戦争”に勝たなければいけない」と訴えた。

 また、ファーウェイは「不透明」というイメージの払拭にも取り組んだ。「非上場企業で、創業者はメディアのインタビューを受けない」と指摘されることが少なくなかったが、この1年は任氏ら経営幹部が海外メディアのインタビューを積極的に受けている。

 中国内ではファーウェイを後押しする動きもあった。調査会社カナリスによると19年7~9月期の中国スマホ市場のシェアはファーウェイが42・4%を占めた。前年同期のシェアは24・9%だったが、スマホ市場全体の出荷台数が3%減と落ち込む中でファーウェイは66%増と驚異的な伸びを見せている。19年通年の中国を含む世界での出荷台数は2億4千万台超となった。スマホ世界出荷台数シェアで米アップルを抜き、韓国サムスン電子に次ぐ2位の座を占める。

 ただ、ファーウェイにとって20年の事業は楽観できるものではない。

 米政府の事実上の禁輸措置の影響により、米グーグルの関連アプリがファーウェイのスマホに全面的に搭載できなくなる見通しであるためだ。中国国内においては規制下にあるグーグルのサービスは主流でないため影響は皆無といっていいが、海外市場でこのような状況が続けば競争力低下が避けられないとみられる。

 中国では、12月中旬にパソコン最大手の聯想(レノボ)グループが、創業者の柳伝志氏(75)の引退を発表している。柳氏と、ファーウェイ創業者の任氏とは同い年だが、任氏は難局に対処するため陣頭指揮を続けることになる。

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