安倍首相と文大統領、対北協力で一致も安保観に深刻なズレ

 【成都=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって24日までの訪中で成果と呼べるのは、自身が最重要課題とする北朝鮮問題で日本や中国との連携を確認したことだ。ただ、会談では安倍晋三首相と北朝鮮に対する安全保障観が180度異なることも改めて鮮明になった。この認識差は今後の日韓関係にも尾を引く可能性が高い。

 日中韓首脳は「朝鮮半島の完全な非核化にコミットし、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定の維持が共通の利益と責任だと再確認する」ことで合意した。

 だが、合意に込めた思惑は一致とはほど遠い。

 安倍首相は、文氏と中国の李克強首相との会談で、北朝鮮の相次ぐミサイル発射は地域の安保を深刻に脅かすものだと強調。国連安全保障理事会の対北制裁の着実な履行を訴えた。

 一方、文氏は会談に先立つビジネスサミットで、韓国の鉄道を北朝鮮を経由して中国などと結ぶ「北東アジア鉄道共同体構想」を持ち出し、この構想を皮切りに「エネルギー共同体や経済共同体、平和安保体制を築けるならビジネスチャンスは一層広がる」と主張した。経済やインフラの一体化を進めることで対北安保が安定するとの持論だ。

 中国とロシアは最近、対北制裁の一部緩和案を安保理に提示。南北が進める鉄道・道路連結事業の制裁対象からの除外も盛り込んだ。鉄道構想に前のめりになる文政権を中露陣営に引き入れようとする狙いは明らかだ。韓国の制裁陣営からの離脱は日米が最も警戒することでもある。

 文氏が8月に日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めたのは、対北安保に絡んで韓国を信頼できないとして輸出管理を厳格化した日本とは協定は維持できないとの言い分からだった。一転、破棄を撤回した背景には、米国が安保上重視する協定の破棄で怒りを買うと、対北問題で米国の協力を仰げなくなるとの危機感があった。

 対北安保に絡む安倍政権への根深い不信感があり、文氏が今回、日中首脳を前に示した対北安保観は今後も日米韓協力に不協和音を生み続ける懸念がある。

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