虎の尾「GSOMIA」を踏んだ韓国・文政権…もはや不信消えず 「レッドグループ入りなら“敵”とみなす」米通告か

【ニュースの核心】

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について「破棄通告の効力を停止」した。回りくどい言い方だが、「破棄を止めて、やっぱり延長します」という話である。

 かと思えば、日本の経産省が「韓国側は輸出管理体制を改善する意欲を示している」と発表すると、韓国側は「完全に事実と異なる」と反発した。日本との合意に後で文句を付けるのは、毎度のことだが、彼らは「なんとかメンツを保たねば」という思いで一杯なのだろう。

 重要な軍事協定を「止めるの止めた」というだけで、国際的には十分、みっともないが、そうなったのも、文政権に覚悟がなかったうえ、米国の出方を見誤ってしまったからだ。どういうことか。

 文政権は協定を破棄する理由に「日本の対韓輸出管理強化」を挙げていた。それは、口実にすぎない。

 本当は、もともと「北朝鮮を敵視するGSOMIAなど、とんでもない」と思っていたのだ。だからこそ、米国の要請を受けても、失効期限ギリギリまで、かたくなに抵抗していた。

 ところが、最後に腰砕けになったのは、なぜか。多くのマスコミは「米国の圧力」を理由に挙げるが、それでは説明になっていない。問題は、圧力の中身ではないか。

 私は「もしも協定を破棄すれば、米国は文政権打倒に動くぞ」と脅したのではないか、とみている。

 ドナルド・トランプ米大統領が在韓米軍を撤退させたい意向をもっているのは、よく知られている。記者会見でも、そう公言してきた。だが、多くの安全保障専門家や米軍関係者は、北朝鮮にとどまらず、中国やロシアを牽制(けんせい)するためにも、朝鮮半島における米軍のプレゼンスは不可欠とみている。彼らを「安保保守派」と名付けよう。

 安保保守派は、韓国という橋頭堡(きょうとうほ)を維持するために「文政権の除去」を視野に入れた。つまり、「GSOMIAを破棄して、中国・北朝鮮・ロシアの『レッド・グループ入り』を目指すのであれば、米国は文政権を敵とみなす」と最後通告を放った可能性が高い。

 ここで重要なのは、韓国という国と文政権を区別する点だ。見放すのは、あくまで文政権であり、韓国そのものを切り捨てるわけではない。

 トランプ政権は中国に対して、そういう扱いを始めている。

 マイク・ペンス副大統領や、マイク・ポンペオ国務長官は最近の演説で、「敵は中国共産党であって、中国という国や中国国民ではない」という点を強調した。

 同じロジックを韓国にも適用して、米国は「敵は文政権だ、と公言するぞ」と通告したのではないか。

 そんな事態になったら、来年4月の総選挙で政権与党の敗北は必至だ。国民の多くは、米国を敵に回して、北朝鮮と心中する覚悟を固めているわけではないからだ。

 文政権は「レッド・グループ入り」を急ぐあまり、米国・安保保守派の虎の尾を踏んだ。協定を延長しても、不信は消えない。いずれ、政権の終わりは近い。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『明日の日本を予測する技術』(講談社+α新書)がある。

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