韓国なお安保意識にずれ 米のくびき脱し「自主国防」目指す GSOMIA失効回避

 【ソウル=桜井紀雄】日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は、土壇場で失効が回避されることになった。ただ、北朝鮮との融和に前のめりになってきた韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、米国との安全保障の枠組みにがんじがらめにされた現状から脱する「自主国防」を目指す姿勢に変わりはなく、日本への不信はくすぶり続けそうだ。

 韓国は、協定維持を再三迫るトランプ米政権の圧力に折れた形だ。韓国国防省関係者は22日、今回の決定が「朝鮮半島情勢の安定と安保協力に寄与すると考える」と記者団に語り、日本側が応じることで「近く協定が完全に正常化することを期待する」とした。

 ただ、この期待感が文政権全体に共有されているとは言い難い。文氏は19日のテレビ番組で、日本が安保問題と輸出管理厳格化を絡めたとし、「韓国が防波堤の役割を果たし、日本は少ない防衛費で自分たちの安保を維持している」と批判。北朝鮮を「敵」とした日米韓の安保協力体制だけに縛られ続ける限り、体よく日本の盾に使われるとの不満をにじませたものだ。

 文氏が「二度と戦争のない朝鮮半島」の実現とともに掲げる安保の根幹は自主国防力の強化だ。米軍側が握ってきた有事の作戦統制権を任期の2022年までに韓国軍に移管することが柱だ。米韓が15日にソウルで開いた安保協議はGSOMIAの扱いが注目されたが、本来の議題は統制権移管に向けた検証だった。

 文氏は10月、国会の施政演説で初めて50兆ウォン(約4兆6千億円)を超える額に増やす来年度の国防予算案に言及し、「われわれの運命を他人任せにせず、自ら決めるために必要なのが強い安保だ」と強調した。文政権は17年の発足以降、国防費を急拡大させてきた。偵察衛星の配備や軽空母級の多目的大型輸送艦の建造計画に加え、原子力潜水艦の取得も構想している。

 北朝鮮を対話や協力の相手とみる文氏には、そもそも北朝鮮を敵に位置付けた安保意識は希薄だった。18年の国防白書から「北朝鮮は敵」とする表現が消え、韓国国防省は「周辺国への備え」に比重を置き始めた。中国やロシアも含む概念だが、竹島(島根県隠岐の島町)周辺での軍事訓練を強化する韓国にあって周辺国は日本も意味すると常識的に考えられている。

 与党「共に民主党」の李海●(=王へんに賛の夫がそれぞれ先)(イ・ヘチャン)代表は22日、会議で「GSOMIAは重要だが、必須不可欠でない」と述べていた。政権内には、日米韓協力のため渋々維持してきたとの認識が強い。

 トランプ大統領が在韓米軍駐留経費の大幅負担増を韓国に迫り、米韓協議が物別れに終わる中、米韓間の相互不信も高まっている。日米韓安保協力の完全修復にはほど遠い現実がある。

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