文氏に誤算 安倍首相と対話演出もGSOMIA問題苦慮

 【ソウル=桜井紀雄、バンコク=原川貴郎】安倍首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の約13カ月ぶりとなる面談は、文氏の呼び掛けで突然行われた。文氏は日韓対立を対話で解決する姿勢を見せはしたが、安倍首相は、韓国側がいわゆる徴用工判決問題の解決策を示すのが先だとの立場を維持し、溝は埋まっていない。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了期限を目前に、文政権は外交の仕切り直しも迫られている。

 「誰も予想できなかった瞬間」。韓国大統領府高官は、タイのバンコク郊外で4日朝に行われた日韓首脳の面談についてこう振り返った。日本政府は「日韓首脳のやりとり」と発表。会談でも立ち話でもなく、「言葉を交わしたという理解だ」(西村明宏官房副長官)と説明した。

 日韓両政府によると、東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議を前に、文氏が先に控室でASEAN各国首脳と歓談していたところに安倍首相が到着。握手しながら、文氏は「ちょっと座って話しましょう」と持ち掛けた。「空いたソファに自然な流れで腰掛けて話になった」(西村氏)。

 内容の発表でも日韓に違いが出た。韓国側が両首脳の対話の意思に力点を置いたのに対し、日本側は、安倍首相が死去した文氏の母親への弔意を伝えたことや、天皇陛下のご即位に文氏が祝意を表したことなど儀礼的なやり取りを主に公表した。安倍首相は短時間の中でも徴用工判決問題での日本の立場に変更はないと念押しをしており、両国間の懸案で進展がなかったのは明らかだ。

 文政権は対日外交をめぐって2つの誤算に見舞われている。

 一つは、日本の輸出管理厳格化に対抗し、8月にGSOMIA破棄を決めたものの、トランプ米政権の高官らが対北朝鮮連携の重要性を強調し、相次ぎ破棄を見直すよう圧迫していることだ。米国を仲介役に引き込むための外交カードだったはずが、期限を22日に控え、逆に米韓関係の足かせになっている。韓国側が破棄を見直さなければ、23日午前0時に失効する。

 もう一つは、16日からチリで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がチリの国内情勢で突然中止になったことだ。文氏にとっては、22日を前に日米首脳らとの接触を模索する最後の機会が消えたことになる。そのため、今回、安倍首相との「歓談」を演出し、問題解決の意思があることを国内向けにアピールする必要に迫られていたといえる。

 ただ、文政権は日本が輸出措置を撤回しない限り、GSOMIA延長はないとの立場を崩していない。日本は徴用工判決問題の解決が先決だとの立場で、何ら溝は埋まっていない。今回の面談では正式な首脳会談の打診もなかったという。

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