韓国の航空会社「日韓関係悪化で減便」のウソ 原因は文政権の失策による「ウォン安」 日本はシンガポールなど「上客」獲得の好機

【有本香の以読制毒】

 昨日の夕刊フジでも報じられたが、大韓航空をはじめとする韓国の航空会社が、日本便の減便や休止を発表した。これを日本のマスメディアがそろって「日韓関係悪化の悪影響」と大騒ぎで伝えている。

 これに追随するかのように、与党・自民党の衆院議員も、自身のSNSで必死の呼びかけをした。

 「民間交流、青少年交流に影響が出ないよう努力を続けています。来なくていい!と威勢良くいう方もいますが観光に深刻な影響が出ます。裾野の広い産業です。(略)この厳しい時期の韓国人観光客の皆さんにはぜひ温かいおもてなしを。お願いします」(武井俊輔衆院議員=宮崎1区=のツイート)

 確かに、ネット上には「もう来なくていい」という声も多い。そのなかにも温度差はあり、韓国の「反日」行為にうんざりしている人、急増する外国人旅行者を迷惑だと実感している人、観光関連の職に就いていて問題に直面している人など、さまざまだ。

 だが、武井議員のツイートはそうした国民の声は二の次で、韓国人客を大事にせよとの考えのようにも読める。

 筆者は一連の報道自体に大いに疑問を感じている。なぜなら、今回の減便・休止は、軒並み経営難に陥っている韓国の航空会社の生き残りの一策に過ぎないというのが真相だからだ。

 1週間前の14日、韓国の二大航空会社、大韓航空とアシアナ航空の4-6月期業績が発表されると、韓国財界に激震が走った。両社とも予想を大きく下回る1000億ウォン(約88億円)台の営業赤字を出したためだ。年間で数千億ウォンの赤字となる恐れもある。ほかに格安航空会社(LCC)含めても、韓国の航空会社8社すべてが同期赤字だ。まさに惨憺(さんたん)たる現状である。

 韓国の航空業界を奈落の底に落とした、最大の要因は「日本」ではない。文在寅(ムン・ジェイン)政権が推し進めた最低賃金引き上げや、失策による「ウォン安」のせいだ。そこへ香港のデモや、中国経済停滞による新規路線就航中止があり、さらに自国内での馬鹿げた不買運動による日本旅行キャンセル騒ぎまで重なったのだ。

 これらの事情を一切伏せて「減便は日韓関係悪化のせい」のように伝えるわが国のマスメディアは、一体、誰の思惑に沿って仕事をしているのか。

 そもそも、観光産業は天候や地域情勢の変化、景気に大きく左右される弱々しい産業だ。それを「裾野の広い産業」といい、地元の頼みの綱として良と捉える議員の見識も疑う。

 せっかくなので、武井議員に今後の参考としていただきたいデータをお知らせしよう。

 日本政府観光局(JNTO)が21日、7月の訪日外国人客数を発表した。訪日客数全体は5・6%増えて約299万人。10カ月連続の増加だ。ただし、韓国からの旅行者は前年同月比7・6%減の約56万人だった。

 しかし、嘆くことはない。韓国人旅行者は世界からの旅行者のなかで最も財布のヒモが固いのだ。昨年の消費金額データを見ても、韓国人の消費額は全平均額の6割ほど。武井議員の地元、宮崎県でも最も高い米国人とでは2倍以上の開きがあり、台湾、香港、タイの人たちにも及ばない。

 ちなみに、シンガポールの富裕層には、一人60万円の日南ツアーが好評だとも聞く。

 武井議員、韓国人客減ぐらいで焦り召さるな。むしろこれを、宮崎に大金を落としてくれる「上客」獲得の好機としようではありませんか。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

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