現実悟った文大統領 日本に対話と協力呼びかけるも楽観できず

 【ソウル=名村隆寛】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が15日、日本の朝鮮半島統治からの解放記念日「光復節」の記念式典で行った演説は、日本政府による輸出管理厳格化などを批判しつつ、日本に対する過度の刺激を避けた抑制した内容だった。

 いわゆる徴用工や慰安婦の問題を蒸し返し、日本の批判に耳を貸さず譲らない文氏だが、今回はこれら具体的な日本との歴史問題について直接言及することはなかった。

 文氏は「日本の不当な輸出規制に立ち向かう」と強調。「責任ある経済強国に向かう道を一歩一歩進む」と述べた。韓国が「誰も揺るがすことができない国を実現できずにいる」と認めた上で、その実現を「改めて誓う」と述べ、日本の措置に危機感を強める韓国国民に危機克服を訴えた。一方で、「日本が過去を顧み東アジアの平和と繁栄を牽引(けんいん)するよう望む。対話と協力の道へ向かうなら喜んで手を結ぶ」と語った。

 文氏はこれまで、日本の措置を歴史問題に対する「経済報復」だと断じ、「警告する」とまで言っていた。この日の演説は打って変わって、現実を直視したものになった。

 ただでさえ低迷から抜け出せない韓国経済に日本の措置が加わり、韓国社会はこの1カ月半、動揺に支配された。演説の最後に「われわれは、できます!」と国民に改めてげきを飛ばした文氏だが、韓国が直面している厳しい現実を認めざるを得なかったといえる。

 日韓関係の悪化を、米国は両国との同盟関係に悪影響を及ぼすと見ており、特に最近の韓国での対日感情悪化に懸念を強めている。日本を強く非難していた文氏は12日、「日本への対応は感情的になってはいけない」と語った。発言の背景に、米国からの圧力があったかどうかは不明なものの、文氏が経済問題だけではなく、高揚する韓国内の反日感情に危機感を覚えたのは間違いなさそうだ。

 ただし、徴用工や慰安婦の問題など、韓国が協定や合意を守らず日本に不信感を与え続けている懸案をめぐって今後、対話が実現しても韓国側が歩み寄りを見せるとは楽観できない。日本との歴史問題で文氏の基本姿勢は変わっていないからだ。

 文氏が冷静さを取り戻そうとする一方で、韓国社会での反日感情が収まる気配はない。日本大使館周辺での反日デモや日本製品の不買運動、日本への旅行回避は続いており、これを主導しているのが文氏を支持する左派勢力だ。日本に和解を求めつつも、文氏が火のついた国民の反日感情を鎮めるのは難しそうだ。

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