韓国に開く「亡国の門」 遡及法が国を滅ぼす

 狙い撃つ

 法の遡及が可能なら、立法の力を持つ人々、具体的には立法府である国会で過半数の議席を持つ与党の議員たちは、政敵を始め自分たちの気に入らない人物をことごとく刑務所送りにすることが可能だ。ターゲットの人物が焼酎好きなら、焼酎禁止法を成立させればいい。禁止法ができたから明日から飲むのをやめよう、では済まされないのが遡及法の恐ろしさだ。

 反政府デモを行う人物を刑務所送りにしたい場合は、その人物がデモに参加しているところを動画や写真で記録し、デモ参加の証拠を固めてから、デモ禁止法を作ればいい。「チョコレート禁止法」だろうが、「大統領批判禁止法」だろうが、どんなばかげた法律でも作ったもの勝ちだ。

 法を遡及させるということは、権力者が邪魔者をいつでも「狙い撃ち」で刑務所送りにできるということにほかならない。

 当然、一般の国民は一秒たりとも安心して暮らせなくなる。専門用語で言うところの罪刑法定主義が崩れ、どんな行為をすれば(あるいはしなければ)刑務所行きを免れるのか誰にもわからない。旧ソ連のスターリン政権やカンボジアのポルポト政権などと同様の恐怖政治につながる道だ。

 2人の弁護士

 今回の韓国の裁判では、まず「親日財産帰属法」で日韓併合時まで法律を遡及させ、それでも勝訴した愚英氏を敗訴させるため法を「改正」している。しかも遡及を前提にして。

 一度ならず二度までも法を遡及させ、国家が個人を「狙い撃ち」にする。そんな法律を作り施行させたのは元弁護士の盧武鉉元大統領であり、同じく人権派弁護士で盧氏の右腕であった文在寅(ムン・ジェイン)・現韓国大統領の政権だというところに、現代韓国の歪みがある。

 法の専門家である弁護士が遡及法の危険性を知らないはずはないのだが、2人の左派弁護士にとっては、間違った過去を正しているとの信念がある(あった)のだろう。

 背景には、専門家からは遡及法との指摘もある極東軍事裁判の「平和に対する罪」で日本の政府首脳らが裁かれたことを正しいと認識し、過去の併合時代の全てを遡及法式に処罰したいとの意向がうかがえる。慰安婦問題や徴用工問題はその典型だ。

 文氏は第二次大戦後に瓦解した韓国臨時政府やその軍隊「光復軍」を高く評価し、日本に対し独立戦争をしたかのような歴史観をアピールするなど、何かにつけて時間を遡る傾向がある。

 間違った過去は遡って正す。当時の法律も国際的な常識も無視してよい-。韓国政府のこの姿勢こそ、現代の日韓関係悪化を象徴するものだ。日韓請求権協定という国家間の約束を破ることも、慰安婦合意を反故にすることも、文政権にとっては間違った過去を正す行為なのだ。

 翻って日本を始め韓国以外の諸外国にとっては、合意という約束を破って開き直る相手と新たな約束を結ぶことに意味はない。「話しあって新たな合意を結ぶ? どうせその合意も破るんでしょ」。「今度の約束は守るって? それもウソですよね」。日本側がこうした認識に達するのも当然だろう。

 合意や約束が韓国で「過去の過ち」になるまで何カ月なのか、何年なのか。韓国との「合意」の有効期間は、もう誰にもわからなくなってしまった。

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