インド、対イラン制裁で米国とのバランス外交に腐心

 【シンガポール=森浩】インドが米国のイラン制裁をめぐり対応に苦慮している。イランをめぐっては、戦略的要衝である南東部チャバハル港に積極的に投資していることや、安価な原油輸入元であることなど、関係が深いためだ。「イランとの関係遮断は不可能」とはインド政府内の一致した見方で、米国との間のバランス外交に腐心する展開となりそうだ。

 チャバハル港は、2016年にインドが関連事業含め5億ドル(約543億円)の投資を決めて、整備が始まった。道路や鉄道も同時に建設することで、インドは宿敵パキスタンを通らずに天然資源の豊富な中央アジアにつながる交易路を確保でき、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いもある。18年にはアフガニスタンからチャバハル港を経由して約7億4千万ドル(約804億円)分の輸出品が運び出された。

 インドはチャバハルを橋頭堡(きょうとうほ)に中央アジアとの連携を強化したい意向で、その動きは急だ。1月にはウズベキスタンで中央アジア各国を集めた外相レベルでの会談を実施。5月30日のモディ首相の2期目就任式にはキルギスのジェエンベコフ大統領を招待した。

 そうした戦略に米国のイラン制裁が影響を及ぼそうとしている。チャバハル港関連事業は制裁の対象外となっているが、インド外務省関係者によると、今年に入って港湾管理などを担当する協力企業を選ぶ入札が数回にわたって延期されたという。この関係者は「制裁の先行きが不透明で入札者が様子見状態になり、集まりづらくなっている」と説明する。

 もう一つの懸念材料が原油だ。インドは米国による原油禁輸措置を受け5月、イラン産原油の輸入を全面停止した。イランはインドへの原油輸出に際し、輸出船調達やルピー建て決済の容認など優遇措置を設けていた。イラン産原油は他国産に比べて3~4割ほど安い価格で取引されていたといい、痛手は小さくない。

 インドが18年度にイランから輸入した原油は約2400万トン。イラク、サウジアラビアに次ぐ3位で、輸入量全体の1割強を占めた。インドはサウジなどからの輸入量を増やす方針だが、国内需要が伸びる中で原油の輸入停止は成長の足かせともなりかねない。

 印ネットメディア「ザ・プリント」は「米国との強固な関係は重要だが、インド自身の利益を犠牲にすることはできない」と指摘している。

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