「トランプ氏=富豪」は虚像か 過去の巨額損失が判明

【アメリカを読む】

 不動産、カジノ経営、ホテル業などを広く手掛け、成功したビジネスマンとして“富豪”のイメージを前面に打ち出してきたトランプ米大統領が、過去の事業で巨額の損失を出していたと米紙ニューヨーク・タイムズに報じられた。自身の成功体験を自伝として出版するなどしてきたトランプ氏の華麗な一面が、「メディアが作り上げたトランプ神話」(米紙ワシントン・ポスト)だったとの見方も出ている。(ワシントン 住井亨介)

■「ずっとわびしい内容」

 5月8日付のニューヨーク・タイムズは、入手した内国歳入庁(IRS)の納税記録の写しを基に、トランプ氏が1985~94年の10年間に、事業で計11億7000万ドル(約1277億円)の損失を出したと伝えた。当時の個人納税者としては最大規模で、8年間にわたって納税が免除されていたという。

 特に損失が大きかったのは90、91年で、それぞれ2億5000万ドル超の赤字を計上し、94年には累積損失が9億1850万ドルに上っていた。10年間で最も少なかった87年でも、450万ドルの累積損失があった。

 同紙が紹介しているところによると、86年にはトランプタワーやカジノなどの権利を共同出資者から買い取るなどして6870万ドルの損失を出したほか、89年に3億6500万ドルで買い取ったシャトル航空便の事業は利益を出さずに終わった。

 同紙は、成功談を誇示するトランプ氏が事業の不振を不況のせいにしていたとしたうえで、「納税情報は、彼の取引能力、財務状況が(主張よりも)ずっとわびしいことを示している」と表現した。

■自称ゴーストライターも登場

 これに対し、トランプ氏はツイートで「80年代、90年代の不動産業者は巨額の損金処理と減価償却をする権利があった。ほとんどの業者が節税目的で損失を計上しようとした」と説明。

 さらに、融資などのため銀行と交渉を繰り返したとして、「スポーツ(のようなもの)だった」と“手ごわい交渉人”ぶりを自賛するかのように振り返った。

 ところが、報道を受けてトランプ氏の名声をさらに傷つける証言も出た。

 トランプ氏のベストセラーの一つ、「トランプ自伝-不動産王にビジネスを学ぶ」(1987年出版)のゴーストライターを自称するトニー・シュワルツ氏は、「最悪のビジネスマンだったのか? 最も巨額の税金を逃れた脱税者だったのか? その両方だった可能性が高い」とツイッターに書き込んだ。

 「トランプ自伝」はトランプ氏とシュワルツ氏の共著とされているが、シュワルツ氏は2016年7月の米誌ニューヨーカー(電子版)で、自らがゴーストライターだったと主張している。

 同誌に「うわべだけをきれいに飾った」「トランプ氏に幅広い関心が集まるよう、実際よりも魅力的に描いたことに深い後悔の念を抱いている」と語っていたシュワルツ氏は、ツイッターで「出版社が自伝の出版を取りやめるか、フィクションとして分類し直してくれるとありがたい」と訴えた。

■アマゾンと同じ手法

 米ブルームバーグ通信(電子版)は、トランプ氏の税金絡みの過去の発言を取り上げて巨額損失の問題を報じた。

 同通信は、米産業界が十分な税金を払っていないと主張していたトランプ氏が、2015年に「(インターネット通販の)アマゾンが適正な税金を払わなければならなかったら、同社の株は大暴落し、紙袋のようにぼろぼろになるだろう」とツイートに書き込んでいたことを紹介。その後は、同社がほとんど税金を払っていないと批判するツイートを少なくとも12回したとしている。

 同通信によると、トランプ氏が利用した節税のための税法措置は、アマゾンが過去2年間にわたって連邦税を支払わず済んだものと同様だという。

 アマゾンへの批判が自らにも降りかかった形だが、「巨額の税金を払うのは本当の愚か者だ」「(税金を払わないで済むのは)私が賢いからだ」などと語っていたトランプ氏だけに、今回の報道に悪びれるふうはない。

 だが、ニューヨーク・タイムズの報道を受けたツイートでは、「とても古い情報で非常に不正確なフェイク(偽)ニュース、(私への)攻撃だ」と不満を書き込んだ。正確ではないというのなら、納税義務があったということになるのだろうか…。

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