トランプ政権、露と北を巻き込み「対中包囲戦」のウラ… 背景にFBIとCIAの対立など複雑な構図?

 米国とロシア、そして北朝鮮が急接近している。米中貿易戦争が激化するなか、米トランプ政権がロシアと北朝鮮を巻き込む戦略とみられる。国際投資アナリストの大原浩氏は寄稿で、背景には金正恩(キム・ジョンウン)政権が抱える危機的状況や、米国内の連邦捜査局(FBI)と中央情報局(CIA)の対立など複雑な構図があると分析する。

 CIA長官を務めたこともあるポンペオ米国務長官は14日、ロシア南部のソチを訪問し、プーチン大統領やラブロフ外相と会談した。米露間の新戦略兵器削減条約(新START)の延長に向けた協議のほか、6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて米露首脳会談へ調整することでも一致したという。

 ロシアと北朝鮮も距離を縮めている。4月25日にはプーチン氏と金正恩・朝鮮労働党委員長の首脳会談が行われた。

 北朝鮮は建国当時から旧ソ連の影響が大きいといわれる。今回の訪露では、正恩氏が冷遇されたと報じられるなど、必ずしも思惑どおりにはいかなかったようだ。

 しかし、北朝鮮は第2回米朝会談の大失敗後、米中貿易戦争において防戦一方の中国からも冷淡に扱われていた。正恩氏は、何か打開策を打ち出さないと、政権を維持することが困難になるような状況だった。

 今月4日にはミサイルを含む飛翔体を発射。ミサイルについてはロシアの高性能短距離弾道ミサイル「イスカンデル」が輸入されたものである可能性が高いと分析されている点も見逃せない。

 トランプ大統領は、ロシアと北朝鮮の接近についても、北朝鮮のミサイル発射についても、特段問題視しなかった。

 なぜならロシアと北朝鮮の連合が結成されれば、目下の最大の敵である中国を地政学的に挟み撃ちできるからである。「敵の敵は味方」というわけだ。

 こうしたなか、北朝鮮は、非核化をめぐる米朝協議に関して、米国に年末までの交渉の期限を提示している。これも交渉の進展がないまま経済制裁が長引けば、正恩氏の独裁体制が危機に直面することを意味していることがうかがえる。

 トランプ政権は、北朝鮮を対中戦略の駒として扱っているが、米当局内は一枚岩ではないようだ。鍵を握るのは、北朝鮮の反体制派臨時政府とされる「自由朝鮮」だ。暗殺された金正男(キム・ジョンナム)氏の長男、ハンソル氏を保護しているとみられる自由朝鮮が、「FBIの傀儡政権」である可能性については、これまでにも述べてきた。

 FBIは米国の全国的な警察組織だが、ジョン・エドガー・フーバー氏が前身の組織を含め50年近く長官を務めた際には、「国内諜報機関」「国民監視機関」としての活動が強化された。「秘密情報」を握っていた彼を歴代大統領が解任できなかったからだといわれている。

 現状ではトランプ氏とFBIは激しく対立している。トランプ氏はそもそも4回も倒産を経験したスキャンダルまみれの人間であり、「個人情報」による脅しが効かない。FBIが毛嫌いするのも理解できる。「ロシア疑惑」でのヒステリックな攻撃もそのような背景があるのだろう。

 2016年の大統領選でトランプ氏と争った民主党のヒラリー・クリントン氏の「メール疑惑」を暴いたのは内部告発サイトのウィキリークスだった。同サイトは米国家安全保障局(NSA)およびCIA職員だったエドワード・スノーデン氏を支援していたことで知られ、スノーデン氏が現在ロシア国内で匿われているのは、注目すべき事実だ。スノーデン氏が秘密情報を暴いたのは13年、民主党オバマ政権の時代だった。

 歴史的にみても、民主党は中国と二人三脚だが、共和党は基本的に反共ではあるものの、どちらかといえば中国よりはロシア寄りである。

 米共和党政権とCIA、ロシア、そして北朝鮮をつなぐ点と線が、貿易戦争の最中に浮上しているのは決して偶然ではない。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

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