「日産VSルノー」仏・マクロン大統領が介入の“異常事態” ルノー問題は政権浮上の“命綱” 専門家「焦っているのはマクロン氏」

 日産自動車と仏ルノーの主導権争いで、フランスが禁じ手の政治介入を強めている。マクロン大統領が30日からアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合に合わせて、日産前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)逮捕について、安倍晋三首相に面会を求めていることが分かった。民間企業同士の争いに、一国の元首が恥も外聞もなく乗り出してくる異常事態。日仏外交戦が開戦となるのか。

 29日付のフランス経済紙レゼコーは、マクロン大統領がG20首脳会合で、日産問題について安倍首相と話をしたい考えだと伝えた。

 仏政府はルノー株の約15%を保有する筆頭株主。同紙は大統領側近が「主導権争いとなれば、ルノーに日産株を買い増すよう求める用意もある」と警告したとも報じた。日産とルノーの「改定アライアンス基本合意書(RAMA=ラマ)」では、ルノーは日産の合意がなければ日産の株を買い増せないが、早速協定を無視する形で日産側を威嚇した構えだ。

 ルメール経済・財務相は「パワーバランス(力関係)の変更を望まない」と牽制(けんせい)している。

 仏メディアも日産批判を強めている。リベラシオン紙は、日産の西川(さいかわ)広人社長が29日開かれた日産とルノー、三菱自動車の3社連合の会議で、オランダの会場を直接訪れなかったことについて「ゴーン(容疑者)の問題を日産はルノーとの力関係を変更させる絶好の機会と捉えたとする説を助長する」と指摘。レゼコーも「西川氏は(直接訪れれば)善意を示せたのにしなかった」とするルノー関係者の言葉を報じた。

 ゴーン容疑者が逮捕されたのは、高額報酬を有価証券報告書に記載していなかったからだが、フランスではこうした疑惑はすっかり置き去りにされ、拘置所での人権問題など、お定まりの日本批判が目につく。

 「フランスは行政とビジネスの距離が近い」(日本の法曹関係者)との指摘もあるように、仏政府はルノーを通じて間接的に日産支配を強めようとしてきた。

 2014年には仏政府が、株式を2年以上持つ株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」を制定し、ルノーを通して日産の経営に介入しようとする動きを見せた。

 15年4月には政府によるルノー株買い増し命令を出したのも、当時経済相だったマクロン氏だった。

 当時はマクロン氏と激しく対立していたゴーン容疑者だったが、ルノーのCEOの任期延長を機に軟化し、近く日産とルノーの経営統合を打ち出す方向だったとされる。

 このタイミングでの逮捕は、マクロン大統領にとっても驚天動地だったようだが、ロイターは「元凶はマクロン大統領の介入主義」「身から出たさび」と極めて冷ややかだった。

 「焦っているのはマクロン氏だけ」と語るのはジャーナリストの片山修氏。「ルノーの問題はマクロン政権に直接影響する課題だ。支持率が低迷しているなかで、仏政府にとってルノー問題は政権浮上の命綱になっている節がある。失敗すると更なる支持率低下を招きかねない。思いあまって安倍首相に最後の手段として、すがろうとしているのではないか」と分析する。

 日産、三菱自動車、ルノーの首脳は29日の協議で、アライアンス(3社連合)の運営を3社首脳の合議制にすることを確認。「3社は引き続き連合の取り組みに全力を注ぐ」とする共同声明も発表した。

 今後、ルノーとの資本構成見直しに動く構えの日産に対し、現状維持をしたいルノーだが、前出のレゼコーによると、国が連合に介入すると、日産との関係がこじれると懸念しているといい、仏政府との温度差がうかがえる。

 前出の片山氏は「集団合議制は、3社連合という『ガラスの連携』のなかにあって、政治の力を排除して決めようとする一つの知恵ではないか」とみる。

 国内で深刻な人気低迷に苦しむマクロン氏だが、もう少し冷静になったらいかがか。

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