米のINF全廃条約破棄で“沈む”中国

【軍事ワールド】

 米トランプ政権がINF(中距離核戦力)全廃条約の破棄に動いている。米国とソ連(現ロシア)で結ばれた歴史的な核軍縮条約をいまさら破棄する理由について米専門家は、狙いは露ではなく、軍拡著しい中国を睨んだものだと指摘している。(岡田敏彦)

INF条約と中国

 INF全廃条約は東西冷戦末期の1987年に米国と旧ソ連が締結した。名称は「中距離核戦力」の全廃とされているが、実際には射程500~5500キロの地上発射型の弾道・巡航ミサイルの開発と配備を禁止するもの。そしてこの条約は米と旧ソ連(現ロシア)の2国間条約で、中国は加盟していない。実は中国は、この条約で米露二大国が開発を自重するなか、弾道ミサイル分野を飛躍的に拡充してきた。

 「遼寧」などの空母やステルス戦闘機「殱-20」(J-20)など通常戦力の増備の陰に隠れた格好だが、弾道ミサイルだけでも射程600キロのDF-15を1000発以上、射程800~1000キロで日本全土を射程に入れ核弾頭も搭載可能なDF-16、同2500キロのDF-21に同1500キロの巡航ミサイルCJ-10など。沖縄どころか日本の主要都市全てを核・非核のミサイルで集中攻撃できる規模だ。

 日本では中国のこうした圧倒的な軍事力について政治的に見て見ぬ振りをする向きが多いが、米国では特にDF-21シリーズを問題視している。

 なかでも米国空母を近海に寄せ付けないことを主眼とする準中距離弾道ミサイル「DF-21D型」は、マッハ10(音速の10倍)の速度で米空母を攻撃できるとされる。その速度から迎撃も不可能との分析もあり、多くの米軍事専門家や政治家が脅威を指摘。中国の対米軍事戦略「A2AD」(接近阻止・領域拒否、Anti-Access Area Denial)の象徴ともみられてきたミサイルだ。

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