「中国の窃盗行為」に目をつぶってきたのは誰なのか トランプ政権「対中戦争」の本質

 【ニュースの核心】

 ドナルド・トランプ米大統領が、いよいよ中国との貿易戦争に本腰を入れてきた。これに対して、日本のマスコミは「保護主義はけしからん」と批判している。

 知的財産に対する「中国の窃盗行為」に目をつぶってきたのは、誰なのか。紛争の原因を追及せずに上から目線で説教しても、解決につながらないばかりか、事態の本質を見失ってしまう。

 トランプ氏は24日、対中制裁第3弾として新たに2000億ドル(約22兆5000億円)相当の輸入品に10%の上乗せ関税を発動した。これで、中国からの輸入品の約半分に制裁関税を課した形になる。中国が報復すれば、さらに増額して、輸入品全体を制裁する方針だ。

 トランプ政権はなぜ、ここまで強硬姿勢を貫くのか。

 それは、中国が長年にわたって、米国はじめ世界中の知的財産を盗みまくってきたからだ。このまま放置すれば「米国の経済優位性が損なわれるだけでなく、安全保障上の脅威になる」という基本認識がある。

 ホワイトハウスや米通商代表部(USTR)の報告によれば、中国は産業スパイやサイバー攻撃などを通じて、米国の知的財産を盗み続けてきた。中国に進出した企業には、政府が圧力を加えて技術移転を強要した。

 米企業関係者は「中国にいる間は脅迫されても黙っているしかなかった。拒否すれば、罰を覚悟せざるを得なかったからだ」と証言している。

 これは米企業だけの問題ではない。日本企業も同じである。

 これまでもささやかれていたが、表面化してこなかった。当事者たちが口をつぐんでいたうえ、マスコミも報道しなかった。大きく報じれば、当のマスコミ自身が、中国から追い出されかねなかったからだ。

 最近も、中国で産経新聞記者が日中高官協議の取材から閉め出され、日本政府が抗議する事件が起きている。中国は、自国に都合の悪い報道を「圧力と脅迫」によって押しつぶしてきたのである。

 米国は2010年以来、10回も政府間協議で中国に対処を求めてきた。習近平国家主席は16年の米中首脳会談で、当時のバラク・オバマ大統領に改善を約束した。だが、事態は改まらず、いまや中国の知的財産侵害は最大で年間5400億ドル(約60兆円強)と見積もられている。

 そうした経緯に業を煮やして踏み切ったのが、今回の制裁なのだ。

 にもかかわらず、例えば、朝日新聞は20日付社説で「米中通商紛争 話し合いで打開策探れ」との見出しで、「日本はトランプ政権に対し、自制と政策の見直しを迫らなければならない」と訴えている。

 あたかも「自由貿易の旗手」を装ったかのような中国の言動は噴飯ものだ。日本も被害者であり、中国の脅威は日本にとっても同じである。

 これは「米中新冷戦」の序章でもある。日本はむしろ、米国を側面支援すべきであって、間違っても、中国の米国批判に手を貸すようなまねはしてはならない。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。

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