内から揺らぐ最強の軍事同盟 ロシアの脅威抑止へ NATOの結束維持が焦点

 11日開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の最大の焦点は結束維持の成否だ。国防費をめぐり批判を高めるトランプ米大統領の言動を欧州は強く警戒。亀裂が外交・経済だけでなく、安全保障でも深まれば、同盟の信頼も損なうことになる。ロシアなど外部の脅威に対処してきた最強の軍事同盟は、内側から揺らぐという事態に直面している。

 「(米欧には)貿易で深刻な相違がある。私の役目はそれが及ぼす悪影響を最小限にすることだ」

 NATOのストルテンベルグ事務総長は11日、開幕前の関連イベントで強調した。首脳会議の差配役の事務総長がそう語らねばならないほど同盟にきしみが生じている。

 トランプ氏は今春以降、イラン核合意を離脱し、欧州連合(EU)の鉄鋼などの輸入制限を発動。同盟国の利益に反する行動をとった上、最近はNATOにも「NAFTA(北米自由貿易協定)と同じくらい悪い」と述べ、これまで以上に不満をあらわにしている。

 欧州側は貿易問題などで対立しても、安全保障にまで亀裂を広げたくないのが本音。だが、批判の激化を受け、NATOと協力を進めるEUのトゥスク大統領は10日、アフガニスタンでの対テロ戦への協力などを挙げて「同盟を大切にし、このことを思い出してほしい」といら立ちを強めた。

 国防費増額は欧州も必要と認め、取り組んできた。だが、急激な増加は難しい。やり玉に挙がるドイツは目標の2024年でもGDP比1.5%にとどまるが、14年比で80%の増加だ。メルケル首相は11日、米に次ぐ規模の部隊をNATOに提供しているなどとし、「ドイツは大きな貢献をしている」と主張した。

 「史上最も成功した軍事同盟」といわれ、東西冷戦も勝ち抜いたNATOは来年で創設70年。これまでも同盟内の摩擦がなかったわけでなく、ストルテンベルグ氏はイラク戦争をめぐる米英と仏独の深い対立なども「克服できた」と訴える。

 だが、元スロバキアNATO大使のトマス・バラセク氏は「今回は質が違う」と欧米メディアに語る。場合によっては「米国第一」を掲げるトランプ氏の下、同盟を率いた盟主が関与を低下させかねないとの不安があるためだ。

 ウクライナ危機以降、NATOは東欧の防衛態勢を強化し、ロシアの脅威に対して抑止力を高めてきた。だが結束が弱まれば、ロシアに付け入る隙を与え、「抑止力の効果が下がるのは明白」(バラセク氏)。同盟内の対立がロシアを利する懸念は強い。(ブリュッセル 宮下日出男)

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