聖火リレー大阪知事「中止」言及に…「仕方ない」「十分に議論を」揺れる聖火ランナー

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく「蔓(まん)延(えん)防止等重点措置」が大阪府に適用されることを受け、吉村洋文知事は1日、対象となる大阪市内での聖火リレーを中止すべきとの考えを示した。市内を走る予定のランナーは、延期の1年間も準備を重ねてきただけに、「仕方ない」「慎重に判断を」など複雑な心境を見せた。

 「人が集まるイベントなので中止も仕方ないがそうなれば残念。無観客やランナーのマスク着用など感染防止対策を徹底したら実施できるとも感じる。十分に議論した上で判断してもらいたい」

 大阪市の聖火ランナーの一人、山本潤二さん(62)は突然の吉村知事の発言に困惑を隠し切れない。

 家電メーカーに勤務していた約3年半前、脳梗塞で倒れた。1年間のリハビリをへて、つえなしで歩けるようになり、聖火ランナーに手を挙げた。定年退職まで働けなかった分、「何かを残したい」との思いを込めていた。

 感染拡大を防ぐ重要性を理解しつつ、「全国を回る聖火リレーで大阪市だけぽっかり穴が開くのは、五輪の『つなぐ』という姿勢も崩れてしまうのではないか」と開催理念とのバランスに疑問を呈する。

 同じく聖火ランナーの島津眞理さん(57)は、1980年モスクワ五輪出場が確実視されていたスイマーだったが、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議した日本を含む西側諸国がボイコット。オリンピアンとなる夢を絶たれていた。

 それだけに今回、約40年前の悔しさを聖火をつなぐ走る力に変えたいと志願した。新型コロナに感染しないよう体調管理に気を配り、3月25日に福島県でリレーが始まると、「もうすぐ自分の番」と気持ちを高めていた。「毎日、聖火リレーのニュースを見て楽しみにしていたので、中止になるならとても残念」と表情を曇らせる。

 東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)は、「重点措置が適用されるなか、聖火リレーをするのは矛盾している。現在の感染状況では、中止は妥当ではないか」と話す。

 大阪を後回しにすることも一案とした上で、「新規感染者数が落ち着いているときに活動するのは問題ないが、感染拡大の兆候があればすぐにストップする。そのことを前提にすることがコロナ時代には必要だ」と指摘している。

 日本大危機管理学部の福田充教授は、無観客にしても人が集まるリスクはあるとしたうえで、「警備態勢を整えられないのであれば中止もやむを得ない」との見解を示した。

 大阪市内は14日にリレーが予定されている。

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