理解と共感を得るために 東京五輪開幕まで半年

 「もう、大会をやれないということはないのではないか」

 昨年9月、ある大会組織委員会幹部はこう語った。東京では新型コロナウイルス感染拡大の「第2波」が落ち着き、欧米ではゴルフやテニスの国際大会が再開され始めた時期。万全の感染対策を講じれば、五輪の開催は可能-。そんな感触をつかんだ様子だった。

 年が明け、2度目の緊急事態宣言が発令される中、東京五輪に向ける国民のまなざしは、かつてないほど厳しい。報道各社の世論調査は、「中止」「再延期」を予想、望むものが計80%前後に達した。海外メディアの論調もせきを切ったように懐疑的になった。この状況で開催は困難-。世間は今、そう傾いている。

 別の幹部は「世論調査の数字に一喜一憂しても仕方がない。われわれは粛々と準備を進めるだけ」と強調する。とはいえ、国民の支持なくして大会の成功はあり得ない。国民の声を、関係者はもっと重大に受け止める必要がある。

 国民の多くは、組織委などが掲げる「安全、安心な大会」の姿を十分、イメージできていない。昨年9月に政府主導で立ち上げたコロナ対策調整会議は計6度開かれ、そのつど議論の中身が公表された。国民の理解を得る重要性を認識し、情報公開に努めた跡はうかがえる。ただ、世論調査はそれが不十分であることを示す。

 長引くコロナ禍で経済が落ち込み、医療逼迫(ひっぱく)も叫ばれる中、それでも開催する価値が五輪にあるとの共感も得られていない。スポーツ界は「反感を買ってまで開催を訴えられない」と及び腰になるのではなく、大会への期待感が高まるよう率先して動くことが肝要となる。

 規模の違いはあれど、スポーツ大会は各地で現在も行われている。積み重ねた知見をフル活用すれば、何らかの形で開催は可能だろう。ただし、国民からの「理解と共感」を十分に得られないままでは、聖火は半年後を待たず、消えることになりかねない。(森本利優)

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