“プロ野球界の半沢直樹”山室晋也氏が異例の転身! ロッテ在任6年で「初黒字」に導いた辣腕、J1清水再建の勝算語る

 平成の民放ドラマ視聴率1位を記録した「半沢直樹」の続編は4月に放送開始予定だが、“球界のリアル半沢直樹”は一足早くシーズン2に突入した。プロ野球・ロッテ前社長で、J1清水の新社長に就任した山室晋也氏(59)が14日、静岡市内で会見。ロッテの在任6年間で初の黒字化に導いた辣腕はなぜ、「これまで縁はなかった」というサッカー界に転身することに決めたのか。畑違いの新天地に降り立った理由と、その勝算を熱く語った。(片岡将)

 186センチの長身、語り口と同様に穏やかで甘いマスク。だが、見た目に反して、内に秘めた熱量は言葉の端々に表れる。

 「もともと火中の栗を拾うことに躊躇しない性格なんですよ。銀行に勤めていたころ、最後は子会社の社長だったのですが、これがまあ、ストレスのない会社で『オレはこんなとこで終わりたくねえぞ』と思っていた」

 みずほ銀行の子会社社長からプロ野球の世界への転職を決めた際も、仕事へのやりがいを求めて「火中の栗を拾う」思いだったという。

 30億円の赤字を抱えるロッテの社長に就任後、まず社長室の壁をなくした。営業、販売など各部の垣根を下げて業務を効率化。自らグラウンドに出て現場の選手たちの声に耳を傾け、球場を歩き回りファンに話しかけて生の声を拾った。積極的な露出と営業策を打ち出すことで、5年目の2018年には約7億円の黒字を出すまでになった。

 足もとが固まり、これから優勝争いに加わるための戦力補強を行う態勢が、いよいよ整いつつあった矢先の転身だ。

 「ある程度、自分の中でやり切ったという手応えはあった。優勝は本社の方にお任せするというかね。補強費も潤沢に使えるようになってきた。ここからは現場レベルの勝負。自分が口を出すと現場介入になってしまう。チームが強くなっていく様子も見たい気持ちはあったが、私は外部から来た人間。“大政奉還”ですね」

 未練を断ち新天地を求めた。清水の他にJクラブ、ラグビー界からのオファーもあったという。東京に家族を残しての単身赴任となるが、「静岡のサッカー熱の高さ、そしてクラブへの愛。これは何物にも代えがたい。この期待に応えるクラブ作りというのは、やりがいでしかない」とたぎる熱意を隠さない。

 「次なる火中の栗ですね」と笑う清水の再建も難事業といえそうだ。

 1993年のJリーグ発足時から名を連ねる名門のひとつだが、ここ数年は成績、経営の両面で苦難が続いている。付け焼刃の選手補強、他クラブを退任した社長の“天下り”就任など不可解な人事が続き、2015年にはクラブ史上初のJ2降格。18年には、出向社員が6年間で総額6700万円の横領に手を染める不祥事が発覚した。プロ野球以上に厳格な健全運営が義務づけられるJリーグにあって、昨季は3期ぶりに2億円超の赤字を計上している。

 この状況に“待った”をかけたのが、清水をスポンサーとして支える地元企業の鈴与。年商4000億円超の倉庫運輸関連企業の社長で、クラブ会長も務める鈴木健一郎氏は44歳の若さだ。

 このオフはドラスティックな“引き抜き人事”を断行。経営再建の切り札となる山室社長を筆頭に、現場指揮官は昨季J1を15年ぶりに制した横浜のヘッドコーチ、ピーター・クラモフスキー氏(41)に委ねる。編成を掌握するゼネラルマネジャー(GM)には、C大阪から大熊清統括部長(55)を招聘した。

 大胆な役員人事は10日の株主総会で承認されたが、清水関係者は「これまでクラブの要職にあった人はクビか、残った人は格下げになった。清水を知らない人ばかりが三役になって大丈夫なのかという声はあります」。

 ロッテ時代も当初は逆風ばかりだった。山室社長は「サッカーでは野球のように赤字が簡単に容認されるわけではない。『優勝できました。赤字も増えました』は許されない。かといって、『最下位ですが黒字でした』では本末転倒。クラブ経営と成績は両輪。どちらが欠けても成り立たない。3年で何とか道筋を付けたい」と意気込む。再建請負人のもと、名門が華麗な“倍返し”を見せられるか。

 ■山室晋也(やまむろ・しんや) 1960年1月25日生まれ、三重県出身。59歳。桑名高から立大を経て、82年に第一勧銀(現みずほ銀)に入行。支店長時代は16期中15期で表彰を受け、執行役員や子会社社長などを歴任。2014年1月にプロ野球・ロッテの球団社長に就任、18年に創設50年目で初の黒字を実現した。高校、大学、社会人とラグビーに打ち込んだ。ポジションはロック。家族は妻と1男3女。

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