マラソン札幌開催「合意なき決定」の内幕 森会長に迫った小池知事

 苦渋の決断を余儀なくされたキーマンの顔は曇り続けていた。東京五輪陸上のマラソン・競歩の札幌への変更が1日、開催都市の同意がないまま決定するという前代未聞の事態。「合意なき決定だ」。東京都の小池百合子知事は、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた象徴的なフレーズに、都の立場をなぞらえてみせた。突然の変更通告に小池知事は一時、法的措置も検討したというが、開催まで残り9カ月を切った大会運営自体への影響に懸念を示し、最終手段に訴えることまではしなかった。

 「今も東京がベストという考えは変わっていない」。この日行われた国際オリンピック委員会(IOC)などとの合同会議で、小池知事はこう意地を張った。

 都が東京開催を断念した最大の理由は、IOCに絶大なる権限があることだ。小池知事は会議後に都庁で行われた定例会見で、「さらに戦うことも検討したが、勝てる可能性は少なかった」と強調した。

 都は法的に訴えることができる領域はどこかを検討。訴訟沙汰になれば、時間も費用もかかる。法律の専門家の意見を聞いた結果、「札幌移転を覆すのは難しい」との見解を示されたという。

 合意か、不同意か-。10月31日に都庁幹部らと内部協議を重ね、悩み続けた知事が都庁を後にしたのは日付が変わった午前0時過ぎ。知事が変更案を受け入れる意思を押したのは、1日午前2時ごろに直接届いたIOCのトーマス・バッハ会長からのメールがきっかけだった。

 メールには、マラソン・競歩を待ち望んでいた都民の気持ちをおもんばかり、都民のために五輪後に行われる「セレブレーションマラソン」の提案が書かれていた。

 それまで都とIOC、大会組織委との溝は深かった。「どうして私には電話をくださらなかったのか」。札幌案が都が把握する数日前に組織委の森喜朗会長らに伝わっていたことを後から知った小池知事は、森会長らに直接不満をぶつけている。

 札幌変更案が公表された翌日、都内の会合で「涼しい所というなら北方領土でやったらどうか」と憎まれ口を叩いたのも、森会長が首相時代を含め、日露領土交渉を担ったロシアのプーチン大統領と仲がよいことを当てつけたものだ。「そもそも決まっていると言い張る相手に対して、交渉するのはタフだった」。こう総括した小池知事の表情は愁(うれ)いを帯びていた。

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