同組ライバルにも惜しみなく声援 日本のラグビーファンが示すノーサイド精神

 1次リーグも終盤に差し掛かったラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会。開幕前にはラグビーの伝統国以外で初めて開催されることへの懸念もあったが、日本代表の活躍はもちろん、日本流のおもてなしも海外のラグビーファンに好評だ。日本と無関係の試合でも、海外からのサポーターとともに日本の観客が盛り上がるのは当たり前。日本にとって念願の8強進出を直接争うアイルランドやスコットランドに対しても声援を送る姿勢は、ラグビーの「ノーサイド」の精神を体現している。(宇山友明)

ともに肩を組み

 アイルランド、アイルランド、ともに並び立ち、肩を組み-。日本と同じ1次リーグA組のアイルランドとロシアが対戦した10月3日のノエビアスタジアム神戸(神戸市兵庫区)。試合前の国歌斉唱ではアイルランドの選手やファンだけでなく、日本の観客も英語の歌詞を歌い上げる姿があった。

 アイルランド共和国と英領北アイルランドが1つのチームを編成するアイルランド代表は、試合前の国歌斉唱の際に共和国の国歌ではなく、チームのために作られた特別な歌「アイルランズ・コール」を歌う。ほとんどの日本人にとって、なじみのない歌だったはずだ。

 今大会、各チームのジャージーを裸の上半身にボディーペイントして応援することで有名になった日本人男性も、緑色のアイルランドカラーで観戦。背中には「ショルダー・トゥー・ショルダー」(肩を組み)と歌詞の一節が書かれていた。

 声援の対象は強豪であるアイルランドだけではない。劣勢のロシアの選手がトライを目指すと、ロシア人に交じって日本のファンも「ロシア!、ロシア!」とコールし後押しした。

 アイルランドのジャージー姿で観戦していた兵庫県川西市の会社員、岸翔太さん(23)は「せっかくの自国開催のW杯なので、日本代表じゃなくても応援したい。ライバルチームでもトライを決めればうれしいし、必死にプレーしている姿には敵とか味方とか関係なく感動する」と話す。

「3トライ以下で勝って」

 もっとも、アイルランドは目下、日本と8強入りを争っているだけに、複雑な部分は当然ある。

 オーストラリアのシドニー在住の高校教師、大城芳也さん(24)は「きょうはアイルランドを応援しているけど、3トライ以下で勝ってほしい」と微妙な本音をぽろり。4トライ以上を挙げればボーナス点が与えられ、日本との1次リーグ突破争いで有利になるからだ。

 もともと音楽や文化が好きでアイルランドを応援しているという東京都板橋区の会社員、大仲千恵さん(50)はこの日は心置きなく声援を送れたが、困ったのは9月28日の日本-アイルランド戦。「アイルランドが点を入れた瞬間はうれしかったが、やっぱり日本にも頑張ってほしいと思い、複雑な気持ちだった」という。

選手たちも日本流で

 日本の観客がA組のライバルに声援を送ったのは、この試合だけではない。9月30日に同スタジアムで行われたスコットランド-サモア戦でも、その後、日本と対戦する両チームにエールが送られた。

 スコットランドの勝利が決まると、スタンドでは日本人とスコットランドサポーターがハイタッチしたり、抱き合ったり。試合後には会場付近で英ロックバンド、ビートルズの代表曲の一つ「ヘイ・ジュード」を熱唱。持参したラグビーボールでミニゲームをしたり、飲食店でジョッキを交わしたりする姿もみられた。

 選手の側も、こうした日本の観客の分け隔てのない応援に感謝の気持ちを伝えるようになった。試合終了後に両チームの選手がそれぞれタッチライン際に並び、スタンドに日本式のおじぎをする光景は、もはや今大会のおなじみだ。

 大仲さんは「日本人が外国のチームを応援するのは、選手たちと同じように見る側にもノーサイドの精神があるからだと思う」と話す。スコットランドが9日のロシア戦で勝利を逃すか、アイルランドが12日のサモア戦で敗れれば、その段階で日本は1次リーグ最終戦を待たずに8強入りが決まる。それでも日本のファンはきっと、ライバルチームの見事なプレーに惜しみない拍手を送るに違いない。

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