五郎丸も絶賛!日本を悲願8強へ導く“王様”田村優 アイルランド破った“黄金の足” 歴代首脳陣から絶大な信頼 ラグビーW杯

 ラグビーW杯で日本(世界ランキング8位)は3日、1次リーグ3戦目の同15位・サモア戦(5日=愛知・豊田スタジアム)の先発メンバーを発表。田村優(30)=キヤノン=が開幕戦から3戦連続先発SOに起用された。3日現在、今大会PG(ペナルティーゴール)1位(6本)、得点2位(22)と抜群の個人成績を誇る。近寄りがたい雰囲気を醸し出し、チームメートから「王様」と呼ばれる男は「いつも通り自分の仕事をしっかりやるだけ」とそっけない。日本悲願のベスト8進出は、クールな司令塔の頭と足にかかっている。 (スポーツジャーナリスト・柏英樹)

 9月28日にアイルランド(当時世界2位、現4位)を破った大金星は、19得点中14点(PG4、ゴールキック1)を挙げた田村の正確なキックから生まれたといっても過言ではない。4年前の前回W杯で日本のキッカーを務めた、あの五郎丸歩(33)=ヤマハ発動機=もこう田村を絶賛する。

 「自分のようにラインの後ろにいるFBと違って、SOの田村は常に動き回っている。走ったあとのPGやゴールキックは息が弾んで正確に蹴りにくいものです。田村は動き回った後でも涼しい顔で蹴って決めている。すごいですよ」

 今大会参加20チームが2試合ずつを消化して1次リーグ前半を終え、個人成績の得点王争いでは田村が2位につけている。つい数日前まで22得点でトップに立っていたが、2日のニュージーランド(NZ)-カナダ戦でNZが9トライ9ゴールを挙げ、今大会最多の63点を奪い大勝。7ゴールを決めたSOマウンガが14点の荒稼ぎで、今大会通算26点とし一気に首位に躍り出たのだ。

 日本に敗れたアイルランドも、3日のロシア戦に35-0で大勝し調子を上げてきた。勝ち点11で、日本の同9をしのいでA組首位に立った。日本は1次リーグ突破を懸けた最終戦のスコットランド(世界9位)戦を優位に戦うためにも、次戦のサモア戦は絶対に勝たなければならない。

 日本のジョセフヘッドコーチ(HC)は、大量点を狙わず確実に得点を重ねる方針。「4トライ以上のボーナスポイント(勝ち点1点)にはこだわらない。日本らしいパフォーマンスを発揮し、しっかりと勝ちに行く」と言っており、田村のキック力にかけてPGを狙う場面が増えるだろう。

 PG成功は6回の田村が今大会全選手中1位(2位はボラボラ=フィジー=ら6人の3回)。この数字を評価しているのが、元日本代表主将で名SOだった松尾雄治氏(65)だ。

 「PGを重ねられると、ボディーブローのように効いてくる。チャンスがあったら絶対狙うべき。たとえ外しても相手のドロップキックから始まるので、再びボールを手にして攻撃できるし…」

 田村がPGをどんどん決めることが、そのまま日本の上位進出につながると松尾氏はみている。もちろん注文もある。

 「攻撃のときのキックにばらつきがあり、味方が競り合えるようないいキックのときと、飛びすぎて相手のカウンターを食らってしまう悪いキックのときがある。そのあたりに気を付けてほしい」

 とはいえ、全般的にはラインをうまく動かせるようになっており、不動のSOに成長しつつあると目を細める。

 ジョセフHCは「田村が負傷しても交代要員は呼ばない」と断言している。前HCのエディー・ジョーンズ氏は「田村は天才」とまで言っている。歴代首脳陣から絶大な信頼をうけている司令塔なのだ。

 その陰で人知れぬ努力を重ねているのも事実だ。NZから神戸製鋼入りした世界的なSOダン・カーターの技術を盗もうと、必死の努力を続けた。カーターが要所でみせる、正面を向いてボールを受け、そのまま斜め後方にノールックでパスするプレーを習得しようと、昨年11月の東京での合宿から取り組んできた。そして、このW杯に間に合わせ、直前になって「なんとかできるようになりました」とうれしそうに言ったものだった。

 サモア戦の控えメンバーに入ったSOの松田力也(25)=パナソニック=が田村との実力差について、しみじみという。

 「田村さんはスキル、判断力でチームに信頼される絶対的なSO。自分もその背中を追いかけ少しは近づきかけてはきたが、まだもうひと踏ん張り必要ですね」

 常に緊張感を漂わせ、チームメートから「王様」と呼ばれ、報道陣にも愛想良いとは言えない田村。アイルランド戦で金星を挙げた直後のテレビインタビューでは、「誰も僕らが勝つとは思っていなかった。勝つと信じていたのは僕らだけ」と怒っているような表情で言い放った。そんなクールな司令塔が蹴るキックの行方が、日本の命運を決める。

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