ラグビーW杯 最前線で体張る「大黒柱」、稲垣啓太 母校の天然芝化に300万寄付

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で5日夜、サモアと対戦した日本代表。ボーナスポイントが得られる4トライを挙げて1次リーグ3連勝を飾り、初のベスト8進出に向けて大きく前進した。スクラムの要、稲垣啓太(29)は、重量級の相手フォワード陣と真っ向勝負。群を抜くパワーと豊富な運動量を備え、地元貢献にも積極的な好漢が、日本の「大黒柱」として確かな存在感を放った。

 3試合連続の先発出場となった稲垣は、屈強な相手に突進を繰り返し、勝負の鍵を握るスクラムでも一歩も引かずに奮闘。後半途中で交代するまで、最前線で体を張り続けた。

 新潟市(旧新潟県新津市)出身。中学3年でラグビーを始め、花園出場43回を誇る地元の名門・新潟工に進んだ。入学当時の体重は120キロ超。差し入れのリンゴを片手でつぶす怪力で、周囲を驚かせた。

 「将来は日本代表になって世界と戦う選手になる」。同校ラグビー部の樋口猛監督(47)はこう確信したが、特別扱いはせずにほかの選手と同じ練習メニューを課し、低いタックルなどの基本を徹底的に教え込んだ。

 「彼がボールを持って走れば、たぶん誰も止められない。でも、それではトップリーグで活躍はできない」。全国の強豪に勝つために粘り強く、しつこく戦う必要がある。巨漢ぞろいの世界の選手たちに一歩も引かず渡り合う稲垣の「原点」は、ここで培われた。

 2年のときに左膝を負傷し、体重を落とすために電車通学から片道40分の自転車通学に変えたが、巨体に耐えきれずタイヤが何度もパンクし、1週間で断念したという逸話も。その後、食事制限に懸命に取り組んで減量に成功するとプレーのキレが格段に上がり、3年時には年代別の日本代表に選出された。

 順調にトップ選手へと成長し、前回のイングランド大会にも出場。強豪・南アフリカからの歴史的勝利を含む3勝に貢献した。持ち前の強さや走力に磨きをかけ、日本代表に欠かせない存在となった。

 迫力ある風貌で「笑わない男」と評されることもあるが、恩師や仲間の前では笑顔を絶やさない「愛されキャラ」(樋口監督)。見事な勝利で再び世界を驚かせた9月28日のアイルランド戦の後には目頭を押さえて「男泣き」するなど、勝負に懸ける思いは熱い。

 ラグビー人生の原点である新潟への愛着は人一倍強い。今大会前には、部員不足に悩む母校のため、グラウンドの天然芝化に協力。苗代など整備費用約300万円を寄付した。地元の期待も力に変え、価値ある勝利に貢献した。(松崎翼)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ