ラグビーW杯 相手に敬意、味方を鼓舞 試合前の「ウォークライ」に注目

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で、南半球の太平洋諸島4チームが試合前に勇壮な「ウォークライ(闘いの雄たけび)」を披露し、喝采を浴びている。3連覇を狙うニュージーランド代表「オールブラックス」が有名だが、5日に日本との対戦するサモアのほか、フィジー、トンガも独自のウォークライを持っている。W杯を通じてオセアニア文化の一端にも触れることができそうだ。(橋本昌宗)

 「カマテ(私は死ぬ)!カマテ!カオラ(私は生きる)!カオラ!」

 ウォークライで最も有名なのは、ニュージーランドの先住民・マオリに伝わる舞踊「ハカ」。中でも、隊形を組んだ屈強な選手が中腰で立ち、叫ぶように歌いながら肩や腕などをたたいて踊る「カマテ」は、迫力満点だ。

 マオリに詳しい武蔵大学社会学部の内藤暁子教授(文化人類学)によると、カマテは19世紀初頭、勇猛な戦士として知られたマオリのある首長が、敵の追撃を受けて辛くも生き延びた喜びを表現して創作したもの。相手を威嚇するようなしぐさもあるが、自らを鼓舞しながらも相手の勇気や強さをたたえ、敬意を示す意味も込められている。

 オールブラックスは今回のW杯初戦となった9月21日の南アフリカ戦で、2005年から使われている新しく創設されたハカ「カパオパンゴ(黒のチーム)」を披露。カマテは今月2日のカナダ戦で「初お目見え」した。

 内藤教授によると、ハカはもともと「踊り」を意味する言葉で、戦いに限らず多くの種類がある。冠婚葬祭や学校、集団ごとのハカが演じられるなど、マオリの生活そのものに根ざしたものという。

 ニュージーランドにラグビーが持ち込まれたのはイギリスの植民地になった19世紀半ば以降。1888年にはマオリの代表チームが初めてカマテを踊り、1905年にはヨーロッパ系も含むニュージーランド代表が披露、人気を博した。

 今ではラグビー以外のスポーツで代表チームが試合前に行ったり、軍隊間の交流、外国から国賓を迎える際などにも披露されるように。ハカは「イギリスやオーストラリアとは異なるニュージーランドの国民文化の一つともなり得る存在」(内藤教授)になった。

 ウォークライはハカ以外にも、5日に日本と激突するサモアの「シバタウ」やフィジーの「シビ」、トンガの「シピタウ」がW杯で披露されている。動きやテンポ、歌詞などはそれぞれ異なるが、いずれも試合前に行われ、味方を鼓舞し、相手に敬意を示すものという。

 今回のW杯を機に、日本でもウォークライに改めて注目が集まっている。オールブラックスのキャンプ地の1つである千葉県柏市では、市ラグビー協会とハカの普及活動にも携わるマオリ出身のニュージーランド人ラグビーコーチが、オリジナルの「柏ハカ」を制作。オールブラックスが柏に到着した際に子供たちが披露した動画が200万回以上も再生されるなど、話題を呼んでいる。

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