首回りは50センチ!プロップ稲垣啓太 日本の命運握る一枚岩スクラム

今からでも間に合う!ラグビーW杯の基礎知識

 「明大ラグビーとかけて、ワンタッチカメラと解く。その心は押すだけ」。かつて、スクラムへの執着をそう嘲笑する人がいた。

 しかし、現在世界では「スクラムを制する者が王座をとる」といわれるほど重要視されている。

 スクラムの押し合いでは両チームFWの力関係が直接現れるし、味方の士気にも影響する。なにより50センチでも押せば、バックスは出足がついた状態で攻撃できる。

 単なる押し合い、もみ合いに見えるスクラムだが、その中ではプロレスまがいの闘いが繰り広げられる。相手の首をねじ曲げ、あるいは頭を上げて押せないようにしたり、逆に下方に押してスクラムを崩させ反則を誘発したり…。時にはレフェリーの目を盗み、組んだ瞬間パンチをとばす外国選手もいるという。

 そうした駆け引きをしながら「とにかく自分とロックやNO8の押しをいかに相手に伝えるか。いまどの方向に力が向かっているかをいつも考えている」というのは日本代表左プロップの稲垣啓太(パナソニック)だ。

 スクラムで最前線のプロップが受ける重量は約1トンといわれる。先日テレビ局の企画でパナソニックのFW8人がスクラムで2・5トンのクレーン車を押し進むシーンが紹介された。その重量に耐えて押すには、首が真っすぐ相手の方に向いていなければならない。首がねじ曲がると押せないし、スクラムが崩れたとき危険でもある。このためフロントローは首の強化を欠かせない。結果、稲垣のような首回り50センチの太さができあがる。

 また、スクラムではFW自体の重量が重い方が有利なのは当然。日本代表の長谷川伸スクラムコーチが出場した2003年W杯時の日本FWの平均体重は約100キロ。諸外国はだいたい110キロで、この10キロ差で日本はなかなかスクラムからボールを獲得できなかった。現在の日本FWは平均110キロ、対戦する外国チームは115キロ前後で、5キロ差に縮まったことでボールを獲得できるようになり日本の躍進の原動力になっている。

 さらに、体重差をカバーするため日本はスクラムを工夫し「全員の力が一つの方向に集まるように組んでいる」(長谷川コーチ)。8人がひとつの個体のようになる組み方で、それに必要なのがパックである。腕を隣の選手と交錯させ、互いの体を引き付け合ってスクラムに隙間を作らせないようにするのだ。

 明大の故・北島忠治監督は「左プロップにかかった押しを右プロップが感じるほどの一体感、一枚岩でなければいけない」と言っていた。今回のW杯も、小さいけれどしっかり固まった一枚岩のスクラムができるかどうかに、日本の命運がかかっている。(スポーツジャーナリスト・柏英樹)

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