馬を酷暑から守れ 五輪馬術競技で気をもむ組織委 熱中症リスクも

 東京五輪・パラリンピックで唯一、人間以外の「アスリート」として馬術競技に出場する馬の健康管理に選手や大会組織委員会が神経をとがらせている。人馬一体となって、技の美しさなどを競う馬術は馬の体調が最優先されるのが特徴。14日まで本番会場の馬事公苑(東京都世田谷区)などでテスト大会が行われたが、出場選手は相次いで猛暑の影響を指摘。暑い中で運動する馬が熱中症にかかるリスクは人間よりも高いとされ、更なる配慮が必要となりそうだ。(田中徹)

 テスト大会は12日から、1964年大会で整備され、今大会に向けて全面改修された馬事公苑などで行われた。五輪本番の競技は酷暑の日中を避け、午前中や夕方以降に競技が行われる予定で、テスト大会も午前中に開催された。

 日本や馬術の強豪国ドイツなど4カ国の選手と馬が出場。酷暑に備えるため、馬が期間中に滞在する厩舎(きゅうしゃ)にはエアコンが取り付けられ、会場には馬を冷やすためにミストシャワーや氷水も準備。不測の事態に対応するため、エアコン付きの馬用救急車も用意された。

 12日開催の総合馬術の馬場馬術では、天候は曇りがちで気温も30度前後だったが、小雨が降ったこともあって湿度は90%超に。日本特有の高温多湿の状況に、競技を終えた選手や馬からは大量の汗が噴き出た。

 選手からは、相棒である馬の体調を気遣う声が漏れた。「馬は暑さに弱く、言葉も通じないので最大限のケアが必要」「周りにビルがあるからか、競技場内に風が通らない。心配だ」

 一般的に乗馬クラブなどで採られる馬の暑さ対策としては「扇風機で厩舎を冷やしたり、太ももの血管にホースで水をかけるのが通例」だという。さらにJRA(日本中央競馬会)などの競馬ではパドックの周回時間を短縮したり、出走前後の待機場所などにミストシャワーを設けたりして、馬の負担軽減に努めている。

 テスト大会ではこうした対策を上回る「特別待遇」が採られたが、出場した五輪2連覇中のミヒャエル・ユング選手(ドイツ)は「エアコンが効いているのは良いが、室内外の温度差が大きい」と語り、空調のある厩舎などと外気の気温差がありすぎるのも馬の健康を害すると訴えた。

 さらに、五輪3大会連続出場中の大岩義明選手は、東京大会では暑さのために期間中の練習が制限されると指摘。「装備も、汗がすぐに乾く素材を使うなど対応できるものにしないといけない」と語り、選手個人としても特別な対応が必要であることを明かした。

 13日には、海の森クロスカントリーコース(東京都臨海部)で総合馬術の耐久(野外騎乗)が行われたが、馬の健康状態を懸念し、選手側から、五輪本番の開始時間を早朝に前倒しするよう求める声も出た。

 3日間のテスト大会を終え、大会組織委員会の森泰夫大会運営局次長は暑さ対策については「選手からの声や科学的データから課題がそろってくるので、これから議論する」と指摘。具体策については「国際馬術連盟と、どう乗り越えていくか考えていきたい」との考えを示した。

 現在、オランダを拠点に、障害馬術での五輪出場を目指している吉澤彩(ひかり)選手(28)は、酷暑期の2020東京大会開催について「馬は暑さに弱く、あまりに暑いと体力・食欲が低下してパフォーマンスが十分に発揮できない」と話す。欧州でも、気温が上昇すると40度を上回る日があるが、「日本の湿度の高さは、ヨーロッパにはない環境。選手同士で東京に関する情報を交換して、馬の毛を短く刈るなどの対策を検討している」という。

 東京大会での暑さ対策の一つである厩舎の冷房についても、「ありがたい設備だが、馬にも暑がり寒がりといった個性があるため、一律に冷やせばいいというわけではない。寒すぎる場合は、馬に服を着せるなど個別のケアが必要になる」と心配を口にした。

 吉澤選手は「来年6月頃に、出場選手3名が決まるため、なんとか選ばれるように頑張りたい」と意気込みを語った。

 【馬術競技】 東京五輪では、コース上に設置された大きな障害物を飛び越える際のミスの少なさと走行時間で競う「障害馬術」、ステップなどの演技の正確さと美しさを採点する「馬場馬術」、障害と馬場の2つにクロスカントリーコースで行われる耐久(野外騎乗)を加えた「総合馬術」の3種目が行われる。

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