近江・有馬がたどり着いた聖地「林と出会えたことに感謝」 甲子園

 第101回全国高校野球選手権大会第6日は11日、2回戦が行われ、第2試合で近江(滋賀)は東海大相模(神奈川)に1-6で敗れた。主将・有馬諒捕手(3年)の目に涙はなかった。

 「応援が素晴らしかったです。去年の金足農さんの応援にも勝るようだった。結果は押し出しでしたけど、本当に楽しい打席でした」

 県大会5試合で無失策の堅守が崩れ、6失策。有馬自身も2失策と精彩を欠いた。だが0-5の八回2死満塁、反撃のチャンスで打席が巡ってきた。スタンドからは応援歌に合わせて大きな手拍子。スポットライトの景色は最高だった。

 4万4000人の大観衆が一年前の姿を知っている。昨夏の準々決勝、対金足農(秋田)は2-1の九回無死満塁からサヨナラ2ランスクイズを決められる悲劇の敗戦。その瞬間、有馬は相手の激勝に沸く大歓声の中で一人、うつぶせのまま動くことができなかった。

 リベンジの甲子園に向けて新チームが始動し、1年春からベンチ入りしていた有馬は主将に就任。昨秋は県大会を制するも、近畿大会は報徳学園(兵庫)を相手に初戦敗退。春の選抜出場を逃した。

 「もし報徳に勝って選抜に出ていたら、多分、夏は甲子園に出ることはできなかったと思う」

 エース左腕・林優樹投手(3年)が「原点」と位置づける金足農戦以上に悔しかった一戦。バッテリーが抱いていた変化球で打ち取る自信を打ち砕かれ、直球の必要性を感じるきっかけにもあった。選抜が絶望的となり、甲子園に立てるチャンスは夏のあと一度のみ。ナインの目の色は変わったことが夏の甲子園切符獲得へのスタートラインだった。

 バッテリー間のサイン交換はあうんの呼吸。林は有馬のサインに首を振らない。球種やコースの“最終決定”は有馬の指示で決まっている。

 「緊迫した場面、特にピンチでは不安になります。『ほんとうにこのボールでいっていいのか』とか…」

 投手だけでなくナイン全員に不信感を与えないようポーカーフェースを貫きながら、マスクの奥で一人、自問自答を繰り返してきた。さらに林の持ち味のひとつであるテンポも崩さないようにサインの決定には「(時間を)伸ばせるだけ伸ばす。そこに尽きます」。限られた時間の中での状況判断でゲームメークし、今夏の県大会優勝までチームはわずか1敗。“グラウンド上の監督”の存在がリベンジの甲子園を踏む原動力だった。

 「技巧派の林だからこそ配球面などの長所が発揮できた。林と出会えたことに感謝です」

 試合後は自らを信頼し、捕手として成長させてくれたエースへの思いがあふれた。りりしく戦い続けた背番号「2」の姿はこれからも、高校野球ファンの記憶の中で生き続ける。

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