29歳・錦織圭「未来を変える」と記した五輪への思い

【スポーツ異聞】

 テニスの四大大会ウィンブルドン選手権で8強入りした錦織圭(日清食品)が7月、一時帰国した。つかの間の休息の中、報道陣の前に姿を現したのは、17日に東京都内で行われた2020年東京五輪の「復興モニュメント」プロジェクト発表会見。「良いメダルを取れるように頑張りたい」と口にした日本のエースは「復興」を掲げる東京五輪に特別な思いを抱いている。

 ■高い壁

 気づけばベテランの29歳。技術の進化は、世界トップ10を維持し続けている結果こそが証明している。7月6日のウィンブルドン選手権3回戦では世界ランキング71位のスティーブ・ジョンソン(米国)に快勝し、ツアー本戦通算400勝を達成した。

 一方で、なかなか超えられない“壁”があることも確か。「ビッグ3」と呼ばれるノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、そして37歳ロジャー・フェデラー(スイス)の存在だ。

 フェデラーと対戦したウィンブルドン準々決勝では、第1セットを奪って以降、反撃に遭い、完全に動きを止められてしまった。それでも「フェデラーとここでやれてよかった。負けはしたけど、強いフェデラーとやれたのはいい経験になった」とすがすがしく答えたのは、偉大な選手に挑み続ける自身の可能性を信じているからだろう。

 元プロテニス選手の遠藤愛氏(自己最高ランキング26位)は「フェデラーと対戦したことで、自分のピークをどこへ持っていくのかというのを確認でき、今後さらに柔軟にやっていけるのではないか」と分析する。

 ■復興へ

 2011年3月11日、錦織は、ツアー参戦で米国にいた。震災発生のニュースが届くと、すぐに海外のライバルや仲間から「大丈夫か」とメッセージが寄せられたという。遠く離れた母国の被災者に胸を痛め、支援のための行動は早かった。

 震災から12日後、米フロリダ州マイアミで、テニス界のスター選手によるサッカーの慈善試合を開催。錦織を始め、ジョコビッチやナダルら11人が集結し、約800人の観衆から集まった義援金をすぐに被災地へ届けた。

 以来、シーズンを終えた11月下旬には毎年帰国し、復興支援を目的とした慈善イベントを開催している。

 17日に発表されたプロジェクトは、被災地の仮設住宅で使われていたアルミニウムを再利用し、復興のモニュメントを制作するというもの。にこやかに会見に登場した錦織は、そのモニュメントで使用するプレートに「未来を変える」と書き込んだ。「良い形でもっと成長し、強い自分になっていい結果が残せるようにしたい」という思いからだ。

 そして21日には、スマートフォンからダウンロードできる公式アプリで「Back at work!(仕事に戻る)」というコメントとともに、ジムで重りを抱えながらトレーニングを積んでいる様子を公開。すっかりアスリートの顔に戻っていた。

 プロテニス選手にとって、普段のツアーと五輪は別物と聞く。日の丸を背負って戦う錦織は、前回の16年リオデジャネイロ五輪3位決定戦でナダルを破り、男子シングルスで96年ぶりとなるメダルを獲得した。だから期待をせずにはいられない。1年後、ここ東京では、どんな姿を見せてくれるだろうか。どんな未来が待っているのだろう。(運動部 西沢綾里)

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