阪神・原口、サヨナラ打!がんから復帰後聖地初ヒットに矢野監督泣いた虎党泣いた

 (セ・パ交流戦、阪神4x-3日本ハム、3回戦、日本ハム2勝1敗、9日、甲子園)涙の劇的サヨナラ打! 阪神・原口文仁捕手(27)が、代打で九回2死二、三塁から中前適時打を放って、試合を決めた。今年1月に大腸がんの手術を受け、復帰して5試合目。「みんな、ただいまー!」。日本ハム相手に3タテを阻止。頼れる男の復活ドラマに、甲子園が感動の涙に濡れた。

 ここに立つために-。何でも乗り越え、何でも耐えた。甲子園がぬれたのは、祝福の水のせいだけじゃない。原口のサヨナラ打が、劇的すぎたせいだ。見つめる全員の目元から、光るモノがあふれ出た。指揮官も泣いた。「みんな、ただいまー!」。ヒーローは目を潤ませたところでグッとこらえ、お立ち台の上から、感謝、感謝だ。

 「周りの方々にすごく恵まれて支えてもらったので。それとほんとにね、きょうここに集まってくれたファンのみなさん、そして全国で応援してくれているタイガースファンの皆さんが待っててくれたので、ほんときょうを迎えることができて最高の気分です」

 こんな男だから、最高の筋書きが用意されている。復帰戦となった4日のロッテ戦(ZOZOマリン)と同様に、原口の打席を目指すかのように、打線がつながった。1-3の七回に、梅野の三盗に捕手の悪送球が絡み同点に。そして3-3の九回、2死から高山、北條が連打でおぜん立てし、「代打・原口」登場だ。

 二、三塁から、守護神・秋吉のスライダーを中前へはじき返し、復帰後甲子園初安打。あとはもう、もみくちゃだった。試合後、必死にコメントしようとした矢野監督だったが、涙が邪魔をする。囲み取材は中断を挟むほどに。「勝って泣いたことはないんだけど。もう、優勝とかそういうことかなと思っていたけど」と声が震えた。今季6度目のサヨナラ勝ちで、最後に、誰より強い男が決めてくれた。大腸がん発覚から5カ月。1軍復帰からはわずか5日。背番号「94」がお立ち台に帰ってきた。

 公表前だった1月の、球団に初めて詳しい病状を伝えた直後。間髪入れずに、原口の携帯を鳴らしてきた人がいた。「フミ、俺は待ってるからな!」。矢野監督だった。2月のチームのキャンプ中も、将は沖縄から愛読書であるひすいこたろう氏の著書2冊、送ってくれた。ただでさえ前向きな原口が、燃えに燃えた。

 「今ね、すごく野球がうまくなってるんです。あぁ~、みんなに見せたいなあ!」。手応えのあるオフから一転。急に闘病へ突入しても、下を向いた日なんて一度もなかった。「これで甲子園に帰ったら僕、スターになっちゃいますよね?」。常に思い描いたのは、自身の応援歌の始まりにあるように「ここに立つ」日。そして、待ってくれていた矢野監督の胸に、思いきり飛び込んだ。

 「多くの人にほんとに感謝の気持ちでいっぱいです。こうやって最高の場面で起用していただいてね、ほんとに有り難い気持ちと、期待に応えたいという思いでいつもやっているので、きょうはそういう日になってよかったなと思います」

 お立ち台からグルッと360度を見渡す。待っていてくれたすべての人のために、原口はここに立ち続ける。 (長友孝輔)

★原口の経過

 ◆1月24日 昨年末に受けた人間ドックで大腸がんが判明し、近日中に手術を受けることを自身のツイッターで公表。直筆のメッセージで「早期の実戦復帰を目指します」「常に前だけを向いて進んでいきます」などとつづった。

 ◆31日 「先日、無事に手術終えました。順調に回復してます」(ツイッターにて)

 ◆2月6日 「先日、退院しました。これから少しずつですがリハビリを始めていきます」(ツイッターにて)

 ◆3月7日 鳴尾浜での2軍練習に合流。ユニホーム姿で会見に臨み「必ず今年中に1軍に戻って活躍したい。お立ち台に上がってやりたいこともある」と約束。

 ◆5月8日 ウエスタン・中日戦(鳴尾浜)で八回、代打登場し、右飛。昨年10月13日の中日戦(ナゴヤドーム)以来207日ぶりとなる実戦出場を果たした。

 ◆6月2日 ウエスタン・ソフトバンク戦(丹波)で「4番・DH」で出場。三回に今季1号となる3ランを放った。

 ◆4日 ロッテ戦(ZOZOマリン)の九回に代打で今季1軍初出場。左越えに適時二塁打を放った。

■データBOX

 ◎…阪神のサヨナラ勝ちは5月29日の巨人戦(8-4、甲子園)で高山のサヨナラ満塁本塁打以来、今季6度目

 ◎…原口のサヨナラ打は2017年6月15日の西武戦(3-2、甲子園)以来、4度目。延長十回にシュリッターから左前打を放った。代打では初

■原口 文仁(はらぐち・ふみひと)

 1992(平成4)年3月3日生まれ、27歳。埼玉県出身。東京・帝京高から2010年ドラフト6位で阪神に入団。13年に育成契約となり、16年途中に再び支配下登録され5月の月間MVPを受賞。昨季は代打として球団記録に並ぶ23安打を放った。通算成績は267試合に出場し打率・281、19本塁打、92打点。182センチ、92キロ。右投げ右打ち。既婚。年俸3000万円。背番号94。

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