ノムさんも認めた“孤高の天才打者” 榎本喜八さんが再びクローズアップされる日

 スポーツ紙に載った小さい記事に目がいった。16日のDeNA-中日戦(横浜)で、DeNA・ロペスが一塁手の連続守備機会無失策記録を1517として51年ぶりに更新したというニュースである。

 “前記録保持者”は榎本喜八さん(東京オリオンズ、現千葉ロッテ)。オールド・ファンには懐かしい名前だ。“天才打者”という印象だが、守備でも51年間も破られない大記録を持っていた。知らなかった。

 同時期、ライバルで戦後初の3冠王(1965年)になった野村克也さんはこう話していたことがある。

 「あの時期、本当にすごいと思った打者は榎本さん、投手は稲尾(和久さん=西鉄)やな。2人とも天才や」

 ノムさん推奨、打撃超一級品は疑いのない事実であろう。早実高出身で先輩の荒川博さんのツテでオリオンズに入団した榎本さん。1年目からレギュラー。荒川さんの勧めもあって“禅”を取り入れ、6年目(60年)には.344で首位打者を獲得する。ストイックに打撃を追求する姿から『孤高の安打製造機』という異名がついた。

 当時、拙稿は小学生。その記憶はほとんど消えうせているが、この原稿を書くにあたり、いま改めてユーチューブなどで見たが、無駄のないきれいな打撃フォームに驚かされる。いまの時代でも十分に通用するだろう。

 今回は守備だが、打撃で再びクローズアップされる日も近い。通算2000本安打の最年少到達記録である。日本球界の達成者は52選手いるが、“最年少”は榎本さんの31歳7カ月なのだ(最終的には歴代15位の2314安打)。ちなみに日米通算ならイチローさんの30歳7カ月…。

 榎本さんの最速に近いのが巨人・坂本勇人である。目下、30歳5カ月で通算1765安打(19日現在)。コンスタントに年平均150本以上は打っている坂本。ケガなく順調に出場し続ければ、来年の7月辺り、31歳7カ月で到達の可能性がある。再びレジェンドの名前が挙がるはずだ。

 榎本さんは現役引退後、指導者になることもなく、球界と一切接触を断って2012年他界。華やかなスポットライトを浴びることはなかったが、コアな野球ファンは決して忘れない。16年にその功績が認められ野球殿堂入りを果たしたのだから…。

 そういえば…。榎本さんの早実高の後輩で、荒川博さんの下で共に修業した球界の超レジェンド・王貞治さんが昨日20日、数え80歳“傘寿”を迎えた。王さんの祝い事と前後して、榎本さんが再び球界に登場…。歴史の長さ、縁を感じた。(産経新聞特別記者・清水満)

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