ファン満足度調査から見えてくる「令和のプロ野球」 カギは球場自体で娯楽を供する「ボールパーク化」

 慶大理工学部・鈴木秀男教授が、恒例の「プロ野球のサービスに関する満足度調査」を発表。3年連続で広島が1位、ソフトバンクが2位と盤石だったが、新時代の胎動も聞こえてくる。

 1強巨人の地上波テレビ放映権を経営基盤としたセ・リーグ中心の昭和から、地域密着と球場でのファンサービスに注力したパ・リーグが存在感を増した平成へ。その流れに追随した広島、DeNAがセの脇役から脱皮した。今回で11年目のランキングも、そんな近年の潮流を反映した結果となった。

 そして5月から始まる令和のプロ野球はどこへ向かうのか。鈴木教授は昨年の7番手から3番手へ躍進した西武に注目。「10年ぶりの優勝が好感されたとはいえ、日本シリーズ進出を逃し、功労者の主力選手も流出。それでも1月下旬の調査で高評価だった理由は別にある」。アンケートの自由記述回答欄には、総工費180億円をかけ2021年に完成予定の本拠地の大改修工事に、西武ファンから熱い期待が感じられたという。

 23年には日本ハムが“借り物”の札幌ドームを脱して、北海道北広島市に自前の新球場を開場。さらに明治神宮外苑地区の再開発の一環で、“新神宮球場”が27年中にも完成し、ヤクルトの新たな本拠地となる。以上の3球団はともに試合だけでなく、球場自体で娯楽を供する「ボールパーク化」を推し進めている。

 一方、満足度で下位低迷が続く老舗球団の中日と巨人は、本拠球場に制約が多いため、この流れに取り残されている。打開策は旧来通りで、鈴木教授は「スター選手を多数抱えて、チーム成績を上げるくらいしか見当たらない」と話す。

 盟主巨人の危機感は相当なもので、メディアグループ傘下の球団でありながら、動画配信サービス「DAZN」と今季主催全試合のインターネット配信で合意した。サッカー視聴者層の取り込みなど、全国的なファンの裾野拡大を目指す。

 また、満足度でもV3中の広島は今季、DAZNとの契約を打ち切り。かつて経営危機を救ってくれた地元民放テレビ局への配慮だが、広島県外のファンの視聴環境は厳しくなった。黄金時代を迎え人気を全国区に広げてなお、地元優遇のローカル球団路線を堅持。公式戦入場券もいまだ、全試合分が本拠球場の窓口で販売され、2月末にはチケット争奪戦に5万人超が殺到する大混乱に。前出の自由記述回答欄には、「チケットが取れない」というファンの不満も相当数あったという。

 成績の浮沈にかかわらず声援を送り、近年のカープ人気の火付け役となった関東在住ファンは、現状をどう受け止めるか。今季チームはスタートでつまずき巻き返しを図っている最中だが、鈴木教授は「強くなってからのファンは、成績が下がればすぐ離れる可能性もある」と警鐘を鳴らしている。(笹森倫)

 ■「鷹の祭典」が先駆け 江戸川大学・小林至教授

 2005年から10年間ソフトバンクの球団取締役を務めた江戸川大学教授、小林至氏(51)は「球場に来たお客さんに野球観戦以外の楽しみを提供する『ボールパーク化』は、ホークスがダイエー最終年の2004年に始めた『鷹の祭典』が先駆けだと思います」と説明。

 「鷹の祭典」は期間限定の特別ユニホームを、来場客はもちろん、空港の職員からタクシーや地下鉄の運転手、デパートの店員、銀行の窓口まで着用。「街全体で一体感を共有するこのイベントは、他球団が続々と追随する大成功事例となりました」と指摘する。

 一方、広島の場合は「他球団と違い、良くも悪くも松田元オーナーの“個人商店”的なところがありますから、必ずしも合理性優先ではない。インターネットでのチケット販売の分野は遅れていますし、DAZNとの契約打ち切りの件も、『利益を度外視しても、地元のテレビ局に恩返しする』といった論理が通用するのでしょう」とみている。

 ※昨季1回以上、応援する球団の本拠球場で観戦したファン(各120人前後、計1431人)を対象に、インターネットで1月下旬にアンケートを実施。「総合的な満足度」「総合的に見た場合の理想への近さ」の両項目の評価を軸に、〔1〕チーム成績〔2〕チーム・選手〔3〕球場〔4〕ファンサービス・地域貢献〔5〕ユニホーム・ロゴ-等の影響度も考慮して、各項目の評価の加重平均として算出している。

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