“令和ホームラン時代”突入! 問われる『日本版フライボール革命』の是非 「本塁打は売れるが現実」見方も

【江尻良文の快説・怪説】

 NPB(日本野球機構)の本塁打増が止まらない。8日までに全12球団が9試合ずつを消化し、6日の6試合で22発が飛び交うなど、昨季を上回るペースで増産中。本拠地球場が狭くなったロッテが大幅に数を伸ばし、エース級投手の相次ぐ米大リーグ流出も要因とみられるだけに、手放しでは喜べない。元マリナーズ外野手のイチロー氏(45)が引退会見で表明した「日本の野球は頭を使う面白いものであってほしい」との願いにも逆行すると言える。一方で「本塁打増は観客動員増につながる」との見方もあり、賛否両論火花を散らしている。(江尻良文)

 大リーグでは“フライボール革命”と呼ばれる本塁打狙いの打撃が潮流となっている。7日のTBS系「サンデーモーニング」(日曜午前8時)に出演した球界ご意見番、張本勲氏(78)が日本プロ野球でも本塁打が増加していることについてこうまくしたてた。

 「毎年言ってるでしょう。球が飛び過ぎる。打者のファンは喜ぶか分からんけどね、投手を持っている親はたまったもんじゃない。ちょっと変えた方がいいんだけどね」

 実際、8日現在、セ・パ両リーグ計54試合を消化し119本塁打(1試合平均2・20本)。全858試合で1681本塁打(平均1・96本)をマークした昨季を上回るペースだ。

 特に顕著なのがロッテ。昨季は12球団ワーストのチーム78本塁打に過ぎなかったが、今季9試合で、トップのソフトバンクにわずか1本差の18本塁打。このペースでいけば、全143試合では昨季の3・7倍の286本に達し、2004年に巨人がマークした日本記録259本を上回る計算だ。

 内訳をみると、昨季26本塁打で日本ハムから移籍したレアード内野手(31)がリーグトップの6本を放っているのはともかく、昨季8本の中村奨吾内野手(26)が早くも5本、昨季0の加藤翔平外野手(28)が4本も量産しているのには驚かされる。

 ロッテの本拠地ZOZOマリンは今季から、外野フェンスを最大で約4メートル前にせり出し「ホームランラグーン」302席を新設。フィールドが狭くなった影響が早くも表れた。

 球場の改造はソフトバンクの方が先で、2015年から最大約5メートルもせり出し「ホームランテラス」340席を設置。しかも球界随一の高さ5・8メートルを誇った従来のフェンスの手前に、4・2メートルのフェンスを新設。格段に本塁打が出やすくなった。

 本塁打が増えているのは、打撃技術が向上したわけではないのだ。11年に反発力を下げた統一球を導入したが、本塁打が激減したのにあわてて、13年に秘密裏に反発係数を上げていたことが発覚。いまだファンの記憶に鮮明な不祥事を思い出させる。

 阪神が毎年貧打に泣かされ続けていることから、本拠地甲子園のラッキーゾーン復活構想が繰り返し浮上しては消えているのも当然か。

 もう一つ、本塁打増の要因は、日本球界を代表した各球団のエースたちのメジャー流出だろう。カブス・ダルビッシュ有、ヤンキース・田中将大、ドジャース・前田健太、エンゼルス・大谷翔平、そしてそして西武から今季マリナーズに移籍した菊池雄星。

 メジャーリーグ球団に人材を供給する、日本プロ野球界のマイナー化が顕著だ。それも海外FA権を取得して堂々と出て行くのならともかく、高額な譲渡金目当てで球団側がポスティングシステムでエースを放出するのは自縄自縛、自らの首を絞めるだけだ。

 現在ポスティングシステムを認めていないのは、巨人とソフトバンクだけ。日本球界の“マイナー化”がこれ以上進んだら、お先真っ暗、救いがなくなる。

 ■小林至教授「本塁打は売れるが現実」

 2005年から10年間ソフトバンクの球団取締役を務めた経験を持つ江戸川大学教授、小林至氏(51)は「“ホームランは売れる”というのが現実です」と前向きにとらえている。

 「投手戦もたまにはいいでしょうが、ファンは基本的に派手な“花火”を楽しみたいものだと思います。低反発の統一球が導入され本塁打が激減した11年には、ファンから『おもしろくない』という声が多数寄せられました」と説明する。

 イチロー氏は現役引退会見で「日本の野球がアメリカに追従する必要は全く無い。日本の野球は頭を使う、面白いものであってほしい」と発言して話題になった。日本的な“スモールベースボール”を追究すべしということだろうが、小林氏は「確かに、日本が国際試合で勝つことが目的なら、その通りだと思います。しかし五輪から野球が除外されるご時世で、プロ野球を興行としてとらえるなら、やはりある程度本塁打が出やすい環境が望ましいと思います」と反論する。

 また、「打撃技術の飛躍的進歩も、本塁打増の一因だと思います。以前から、ボールの中心から1・6センチ下側を、アッパー気味に上向き9度の角度のスイングでとらえた場合に打球は最もよく飛ぶということが、科学的にはわかっていましたが、それはまさに紙一重の感覚、神業の世界でした。今は映像技術が飛躍的に高まり、フリー打撃中に自分の打撃フォームを動画撮影してすぐに確認し、修正することができるようになり、スイングを理想の軌道に近づけることが可能になりました」とも指摘している。

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