ワクチン高齢者開始 政権浮沈のカギ握る

 新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種が12日、始まった。同日からは新型コロナ特別措置法に基づく「蔓延防止等重点措置」が東京など3都府県にも適用される中での接種開始でワクチンへの期待が膨らむ一方、対象者の拡大に伴う混乱も予想される。その成否は衆院解散・総選挙の時期も含めて政権の浮沈に直結するだけに、政府は自治体との連携や安定供給に神経をとがらせている。

 「ワクチンは発症や重症化に対してまさに切り札なので、一日も早く多くの皆さんに受けていただけるよう取り組む」。菅義偉首相は12日、河野太郎ワクチン担当相とともに東京都八王子市の高齢者の接種会場を視察。その後、記者団に自治体と連携して円滑な接種に取り組む考えを示した。

 これまでのワクチン接種は医療従事者を中心に実施。接種率は9日午後5時現在で、少なくも1回の接種を済ませた人は約110万人で、全人口の1%未満にとどまる。高齢者接種も当面は記録システムの運用などを確認しながらの走り出しになる。これに対し、英オックスフォード大の研究者らによるデータベースによると6日の時点でイスラエルは61%、英国46%、米国32%に達している。

 政府は6月末までに全ての高齢者が2回接種できる数量を超える約1億回分(約5000万人分)を調達し、各自治体に配布するとしている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の3月の合同世論調査ではワクチンに「期待する」との回答は85・9%を占め、「接種する」も75・8%に上った。

 ただ、供給見通しはEUが対日輸出を承認することが前提条件だ。はっきりと供給スケジュールが見通せず、これまでも自治体側からは接種情報の遅れや度重なる日程変更に不満の声が上がっていた。

 河野氏が「(自治体から)ほしいといわれた量が出せる態勢になる予定」とするのは5月中旬。自民党内でささやかれた4、5月の「早期解散論」の可能性はほぼなくなった。首相自身も新型コロナ対策を最優先に取り組む姿勢を貫いており、政権として反転攻勢に打って出るにはコロナの沈静化が条件となる。

 長引く自粛疲れで国内には重苦しいムードが広がる。これを払拭するためには、ワクチン供給の安定化や接種率の向上に加え、高齢者接種で生じる想定外のトラブルや課題に迅速かつ的確に対処できるかどうかが大きなカギを握る。(大島悠亮)

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