滑り出し上々も課題山積 ワクチン接種開始から1カ月 

 新型コロナウイルスのワクチン接種が国内で始まってから17日で1カ月となる。15日午後5時現在で29万回超の接種が行われ、副反応も安全性に重大な懸念があると判断されたものはない。5、6月に最大計約1億回分のワクチンも供給される見通しで、政府内にも「おおむね順調」との見方が強い。ただ、4月12日から65歳以上の高齢者接種が開始されれば対象は約3600万人と一気に拡大、現場で不測の混乱や問題が生じる可能性もある。

 「私の役割は評価する方ではなくて評価される方だ。自治体や医療機関から評価を受けて改善すべきところはしっかり改善していきたい」。河野太郎ワクチン担当相は16日の記者会見で、接種開始1カ月の評価を問われ、こう述べた。

 ワクチン接種では不透明な供給スケジュールが最大の課題だった。世界的なワクチン供給不足に伴う争奪戦が起き、欧州連合(EU)が輸出統制に踏み切ったからだ。河野氏は少しでも多くの量を早く確保するため、自ら製造元の米製薬大手ファイザー幹部と交渉するなど、陣頭指揮に当たってきた。

 その結果、5、6月分で計約1億回分が供給される見通しとなり、供給増の交渉も並行して続けられている。3、4月分は当初発表の供給量より最大で計約400万回分増え、計約1692万回に上る量が供給されることになった。河野氏は「高齢者分の供給はかなりしっかりと確保できる見通しだ。それぞれの自治体で接種体制をしっかり作ってほしい」と語る。

 懸念された副反応も、年齢・性別非公表の1人にじんましん▽神経線維腫症のある47歳女性に悪寒▽持病のない40歳女性に脱力と発熱-の3件が重い症状として報告されたが、厚生労働省の専門部会はいずれも「安全性に重大な懸念はない」と判断した。政府のワクチン担当者は「ここまでは順調に進んでいる」と胸をなでおろす。

 ただ、希望する国民全員への接種に向けた課題は山積している。計1億回分のワクチン確保もEUが輸送機1便ごとに承認することが前提だ。高齢者接種が本格化すれば、現場で混乱が生じる可能性もある。6回接種できる注射器の確保も課題で、マイナンバーを活用した新たな情報連携システムの稼働も始まるが、自治体がトラブルなく使いこなせるかは未知数だ。

 政府はワクチンの管理責任や追跡可能性が確保されていれば、自治体の柔軟な運用を容認する考えだ。今年は秋までに衆院解散・総選挙や東京五輪・パラリンピックが控えている。ワクチン接種の成否が菅義偉(すが・よしひで)政権の浮沈のカギを握る状況は、しばらく続きそうだ。(大島悠亮)

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