対ミャンマーで政府苦慮 支援停止検討、中国浸透警戒も欧米と足並み

 政府はミャンマーへの支援停止などを検討するものの、発動は避けたいのが本音だ。米欧と同様の厳しい対応に出れば、ミャンマーの対中傾斜を進める結果になりかねない。とはいえ、国軍によるクーデターは日本外交の基軸でもある民主主義や人権など「普遍的価値」の否定で、沈黙すれば国際社会からの批判にもつながる。民政復帰への働きかけを続けると同時に、「苦渋の選択」(外務省幹部)にも備えているのが実情だ。

 「日本は国軍を含めミャンマー側にさまざまな意思疎通のルートを持っている。民主的な政治体制が早期に回復されることを国軍に強く求めていく」

 茂木敏充外相は5日の記者会見でこう述べた。現地では丸山市郎駐ミャンマー大使が中心となり軍側への説得を試みている。

 日本は1988年からの軍政下でもミャンマーとの関係を維持し、先進7カ国(G7)の中で国軍と最も太いパイプを持つ。茂木氏もクーデターで実権を握った国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官と昨年8月に会談した。米欧はこうした日本の立場を生かした役割に期待を寄せる。

 政府は対話を呼びかける一方、米国などが示唆する制裁にはあくまで慎重だ。日本外交の目下の優先課題は「自由で開かれたインド太平洋」を推進し、拡張する中国に歯止めをかけることだ。友好国よりもむしろ中立や中国寄りの国をいかに巻き込むかが鍵で、ミャンマーはそうした国の一つでもある。日本が米欧とともに拳を振り上げれば、中国の影響力がさらに浸透する公算が大きい。

 外務省幹部は「ミャンマー外交で築いてきた独自の立場を失うのは対中戦略上もマイナスだ」と語る。別の幹部も「カードは準備するが、切らなくて済むのが一番だ」と指摘する。

 ただ、デモに伴う大規模な流血事件が発生するなど現地の情勢が緊迫すれば、日本も頬かむりはできない。バイデン米政権は人権に厳しい姿勢を鮮明にしているが、国際社会に促されるまでもなく「主体的な行動」(外務省幹部)を迫られる。

 茂木氏は周囲に「国軍との対話が最優先だが、必要となればしかるべき対応をとるのは当然だ」との認識を示している。

 日本には米欧のように人権侵害を理由に他国の要人に制裁を加える法制度はない。かつての軍政下で行った経済支援の停止や縮小が現実的な選択肢となる。(石鍋圭)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ