首相施政方針、「尖閣」触れずに「課題解決へ連携」

 菅義偉(すが・よしひで)首相は18日の施政方針演説で、「多国間主義」を掲げ、バイデン米次期大統領との関係構築などに意欲を示した。元慰安婦訴訟をめぐる国際法違反などを踏まえ韓国に厳しい姿勢を見せたが、中国に対しては尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海侵入や香港などでの人権抑圧を繰り返していることへの具体的な言及はなかった。

 首相は演説で「多国間主義を重視し、国際社会が課題にともに取り組む『団結した世界』の実現を目指す」と訴えた。「脱炭素化を推進」など、外交でも菅カラーを打ち出した。

 「多国間主義」を掲げ、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」復帰を表明したバイデン氏に歩調を合わせたともいえる。首相は日米同盟を「外交・安全保障の基軸」とした上で、早期にバイデン氏と会談し、「日米の結束をさらに強固にする」と強調した。

 いわゆる徴用工訴訟や慰安婦訴訟で国際法違反の状況を続ける韓国とは距離を置き、日韓関係を「非常に厳しい」と述べた。昨年10月の所信表明演説で「極めて重要な隣国」と位置付けていたが、今回は「極めて」の部分を削除した。

 日中関係については「さまざまな懸案が存在する」とした。尖閣諸島への日常的な接近などが念頭にあるとみられるが、個別の事案には触れずに「主張すべきは主張し、具体的な行動を強く求めていく」と強調した。同時に「共通の諸課題の解決に向けて連携していく」とも述べた。

 習近平国家主席の国賓来日を念頭に安倍晋三前首相が昨年1月の施政方針演説で言及した「首脳間の往来」の表現は消え、「自由で開かれたインド太平洋」や経済安全保障など、対中牽制(けんせい)の姿勢もにじむ。とはいえ、中国は新型コロナウイルス発生時の隠蔽(いんぺい)に加え、東シナ・南シナ海で覇権主義的な振る舞いを強めており、むしろ「団結した世界」を脅かしている。

 日米同盟は安倍氏とトランプ大統領の良好な関係に支えられた側面もある。バイデン新政権の対中政策も見えない中、首相に課せられた責任は大きい。(田村龍彦)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ