日銀資金が大統領選後の米市場を支えるのか 次期大統領が決まらなければ米金融市場が不安定に

お金は知っている

 米東部時間3日は米大統領選投票日だが、本稿が活字となって読者に届く5日までに決着がついているかどうか、疑わしい。選挙前の米メディアの世論調査では民主党のバイデン前副大統領の支持率が共和党現職のトランプ大統領を大幅にリードしていたが、勝敗の鍵を握る米中西部ではトランプ氏が急速に追い上げていた。

 双方が勝利宣言したままどちらが次期大統領の座に座るか決まらず、米政局混乱が長期化しかねない。その場合、懸念されるのは株式を中心とする米金融市場が不安定になることだが、安定剤になるのは日本から米市場に流入する資金だ。

 いきなりだが、グラフを見よう。2012年12月を基準とするわが国の対外金融資産と日銀資金(マネタリーベース)の増加額の推移である。興味深いことに、今年6月時点ではそれぞれの額は411兆円、412兆円とほぼ一致している。日銀は13年以来の異次元金融緩和政策に基づき、巨額の円資金を発行してきたが、日銀資金増加額のほぼ全額相当分が対外金融資産投資となって流出している。対外金融資産の大半はドル建てなので、ドル金融の総本山、米ウォール街を潤しているわけである。

 日銀資金の増発に後押しされて、日本のカネ余りは膨張し続け、家計・企業合わせた現預金総額は昨年末で国内総生産(GDP)の2・3倍に達する。これに対し、慢性的な貯蓄不足の米国のそれは0・7倍に過ぎない。

 トランプ政権は17年の発足以来、インフラ投資、減税という積極財政路線を展開し、連邦政府の財政収支赤字を拡大させてきたが、国債金利は低水準で推移し、株価も上昇基調を保ってきた。今年は中国・武漢発のコロナ・ショックに対して、トランプ政権は大掛かりな国債追加発行を伴う財政支出拡大に踏み切ったが、国債金利は上がらず、株価は上昇気流に乗っている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)の積極果敢な金融の量的拡大政策やテレワークなど経済のデジタル化を担うIT関連株が株価を牽引(けんいん)しているが、日本のカネ余りもそれらに劣らぬ要因だと拙論はみる。

 カネこそはグローバリゼーションの極致である。モノについては「米国第一主義」でグローバリゼーションに背を向けることがあっても、カネのほうはウォール街に集中して米市場を満たしつつ地球全体に配分されたあと、米国に還流する循環構造が揺るぎない。

 大統領選でどちらの候補が最終的に勝とうとも、コロナ不況対策としての財政支出拡大策をとることは疑いの余地がない。同時に行われる米下院総選挙と上院選では、両院とも民主党が多数を制す公算が大きいとされるので、バイデン政権となれば順調に財政支出拡大策が決まる。他方で、トランプ氏続投となっても内政、外交全ての政策が継続されるので、市場は波乱なしだ。

 問題は、大統領選後の政治社会の分断が深刻化することだ。その場合米市場の動揺は避けられないだろう。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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