中国牽制へ「インド太平洋」深化 ASEANは米中両にらみ

 菅義偉(すが・よしひで)首相が「自由で開かれたインド太平洋」の推進に向け東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携を強めるのは、拡張主義を強める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。中国は東シナ海や南シナ海への進出を活発化する一方、巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じ経済的な関与を強めているからだ。ただ、米国と同盟を組む日本と、米中両にらみのASEANには温度差もある。

 中国は新型コロナウイルス感染拡大後も南シナ海で強権的な振る舞いを続ける。人工島の軍事拠点化に加え、8月には中距離弾道ミサイルを撃ち込んだ。

 インドネシアは中国と経済的な結びつきが強い。ただ、排他的経済水域(EEZ)への中国公船の侵入などもあり、近年は「これまで以上に南シナ海の問題を自分のことと捉えている」(外務省幹部)。

 法の支配や質の高いインフラ整備などを掲げる「インド太平洋」は安倍晋三前首相が2016年に提唱した。政府は名指ししていないが、念頭にあるのは中国だ。日本は6日、東京で米豪印との外相会議を開き、「インド太平洋」の推進を確認。19日には、印国防省が海上自衛隊と米海軍との今年の共同訓練「マラバール」に豪海軍が参加すると発表した。中国離れを強める豪軍の参加は07年以来で、安全保障面の連携でも中国を牽制する。

 菅首相は19日、ベトナムで防衛装備品の輸出に関する協定に実質合意した。20日のジョコ・インドネシア大統領との会談でも約5年開かれていない外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の早期実施などを確認した。

 一方で、ASEANには米中の覇権争いに巻き込まれることへの警戒感が強く、米国や日本との安保協力に及び腰な部分もある。加盟国が「親米」「親中」で分断されれば一体感を失い、影響力が低下する恐れもあるからだ。

 日米同盟を基軸とする日本でさえ中国とは経済面などのつながりから、米国のように対決姿勢を取るのは難しい。政府は米豪印やASEANなどと経済や安保面の連携を深化させることで中国を押さえ込もうとしている。(ジャカルタ 田村龍彦)

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