自民党総裁選告示 特定失踪者家族・藤田隆司さんに聞く 「1人でもいい…帰国実現を」

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が8日、告示された。安倍政権は北朝鮮による日本人拉致事件の解決を最重要課題と位置づけながらも、進展がみられないまま今に至る。関係者はどのような思いで総裁選を見守っているのか。拉致被害者や特定失踪者の家族らでつくる「拉致問題を考える川口の会」(埼玉県川口市)の藤田隆司さん(62)に聞いた。

 藤田さんの兄で特定失踪者の進さん(64)=失踪当時(19)=は昭和51年2月、「アルバイトで新宿方面に行く」と家を出た後に消息を絶った。

 「これまでの首相とは比べ物にならないほど拉致問題に熱意を持った人だった。この人なら本当に何か変えてくれるんじゃないかという確かな期待感があった」

 藤田さんは安倍首相をこう評する。

 安倍政権の功績として評価するのは、トランプ米大統領と良好な関係を築くなどし、国際社会による北朝鮮への包囲網を築いた点だ。トランプ大統領が拉致被害者家族と2度にわたって面会し解決を約束したことを、藤田さんは「今まではなかったことだ。安倍さんならではの外交手腕だった」とたたえる。

 その一方で「厳しい言い方をするようだが、成果はゼロだった」と断じる。

 「長期政権を築き、日ごろから『私の手で拉致問題を解決する』と明言していた安倍さんでさえ前進させることができなかった。誰が解決に導くことができるのかと考えると暗澹(あんたん)たる思いだ」

 自民党総裁選には石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の3氏が立候補した。藤田さんが唯一接点を持ったことがあるのは、拉致問題担当相を兼務する菅氏だ。要望活動などで3度面会した記憶を振り返り「リップサービスがうまい人ではないが、口にしたことは着実に実行する誠実な人柄と感じた」と語る。

 3候補はいずれも拉致事件の解決に向けた構想を掲げているが、新政権にとって交渉の糸口をつかむことは容易とはいえない。

 「とにかく1人でもいいので帰国を実現してほしい。そうすれば一気に国内の関心が高まり、兄貴の帰国にもつながるはずだ」

 藤田さんは力を込めた。

(竹之内秀介)

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ