政局 長期政権背景に巧みな人事 離合集散の野党は最大の功績者

 集団的自衛権行使を限定的に容認する安全保障関連法が成立した平成27年秋。自民党の谷垣禎一幹事長(当時)は、与野党の国会攻防が鎮まった後、安倍晋三首相にこう語りかけた。

 「国論が二分するような厳しい法律を成立させたのだから、次はすべての国民が『そうだね』と共感できることをやりましょう」

 首相は「私も同じことを考えていました」と応じ、2人で社会保障政策などを話し合った。谷垣氏は翌年の自転車事故で国会から去ったが、このときの会話が、幼児教育・保育の無償化を含め少子高齢化時代を見据えた「全世代型社会保障」改革へとつながった。

 首相が長期政権を築いた背景には、「お友達内閣」などと批判され1年間で終わった第1次政権の反省を踏まえ、人事で絶妙な手腕を発揮し、政局を安定させた面が大きく影響した。

 とりわけ党の要(かなめ)となる幹事長に谷垣氏や二階俊博氏のような政策面で距離のあった重鎮を配置したことが奏功した。アドバイスに耳を傾けつつ、両氏には政権に対する批判を解消に導く役割を担わせた。

 首相は24年12月の第2次政権発足以降、昨年まで毎年のように内閣改造や党役員人事などを行ったが、骨格となる麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官は同じポストにおいた。対照的に、人事では党内各派閥から入閣希望者のリストを受け付け、一定の範囲で採用するガス抜きも図った。

 派閥推薦を受け入れた閣僚には不祥事も目立ったが、首相は多くのケースで早期更迭を決断。政権に致命的な影響を及ぼすことはほとんどなかった。

 政局を安定させたもう一つの要因が、野党総裁時代も含め、国政選挙に6連勝した首相の勝負勘だった。

 消費税率は26年4月に5%から8%に引き上げられたが、首相は同年11月、27年10月に予定した10%への引き上げを1年半延期する方針を示したうえで、衆院解散を断行した。「増税した年の選挙は避けるはず」という野党の油断も突く形で、自民党は291議席を獲得し、大勝した。

 28年7月の参院選で、首相は消費税率10%引き上げをさらに2年半延期する方針を表明して勝負し、自民党は32の改選1人区で21勝するなど勝利を収めた。

 29年9月には、消費税率引き上げ分の使途を変更する是非を問うとして衆院を解散。野党は小池百合子都知事を担ぎ出し政権奪還を目指したが、野党勢力は分裂し自民党は地滑り的に284議席の圧勝を果たした。

 選挙の強さが求心力を高める相乗効果を生み、「安倍1強」の政権基盤は年を追うごとに厚くなった。

 この間、主要野党は政権を奪い返す態勢自体を作ることができなかった。自民党の重鎮は「野党こそ長期政権を支えた最大の功績者だ」と皮肉る。

 野党は国会で「森友・加計学園」問題や首相主催の「桜を見る会」などの追及に力を注いだ。致命傷となる事実は発掘できなかったが、政府にも公文書の改竄(かいざん)や情報公開の不徹底といった、首相への忖度(そんたく)ともとれる動きが目立った。政権終盤、じわじわ内閣支持率が下がったのはこれらが効いた面が大きく、「1強」の弊害が出たともいえる。

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