複合危機の世界に不安感 安倍首相辞任で 外信部長・渡辺浩生

 安倍晋三首相が辞意を固めたことで、安倍首相と個人的な信頼関係で日米同盟を強固にしてきた米国など主要国は、新型コロナ禍や米中対立など複合的な危機が進む中、民主主義国家の主要リーダー退場に不安感を抱いているとみられる。

 11月の米大統領選に向けてトランプ大統領が共和党候補の指名受諾演説を終え、民主党のバイデン前副大統領との一騎打ちの火ぶたが切られたタイミングだった。米国にとって最重要な同盟国であり、多国間協調の要である日本のリーダーが突然辞意を表明し、米紙ワシントン・ポストなど主要紙も速報した。

 2017年のトランプ政権発足前に、「ともかくハグしなければはじまらない」(外務省幹部)とニューヨークのトランプタワーに就任前のトランプ氏を訪ね、その懐に飛び込んだ。安倍首相のアプローチは、従来型の同盟観に懐疑的とされたトランプ氏と、日本の安全保障に死活的な対米関係の維持を確認した勇断だった。

 先進7カ国(G7)サミットなどトランプ氏が軽視した多国間の外交でも、メルケル独首相に次ぐ長期の任期を維持してきた安倍首相は、「一国主義」を掲げるトランプ政権と欧州主要国との立場や意見を調整する役目も果たし、イランやトルコといった反米色を強める地域大国とも関係を深めてきた。

 新型コロナ禍で揺れる世界は今、エスパー国防長官が米紙への寄稿で「自由で開かれた国際秩序と中国政府が主導する専制システムとが世界的に対立する新時代」と指摘したように、後戻りできない激動に突入したといえる。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ